歩道や商業施設の中、駅の構内といたるところで、歩きながらスマートフォン(スマホ)を操作する人が減らない。歩行者と衝突したり、本人の事故につながったりする恐れがあるが、「分かっちゃいるけどやめられない」といったところか。
「歩きスマホをやめよう」と呼びかける自治体はあるが、罰則規定があるわけではない。一方海外では、条例で禁止するケースが出てきた。
自転車運転中の操作は法律や条令で禁じているが
米ハワイ州・ホノルル市で2017年10月25日、道路横断中の歩きスマホを禁じる法律が施行された。スマホやタブレット型端末の操作に加え、画面を見ることも「ノー」だ。警官に見つかった場合は「初犯」だと15~35ドル(約1700~3960円)、違反を繰り返した場合は最大で99ドル(約1万1200円)の罰金が科される。
日本では、自転車を運転している最中にスマホを含む携帯電話の操作を禁じる規定が、道路交通法第71条5の5にある。さらに東京都では、都道路交通規則第8条で「自転車を運転するときは、携帯電話用装置を手で保持して通話し、又は画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと」と定めている。しかし、歩きスマホについては事情が異なる。
例えば世田谷区が「歩きながらのゲーム、歩きスマホ、ながらスマホはやめましょう」と、葛飾区は「歩きスマホも急に立ち止まって追突されたり、人や物にぶつかったりするなど、自分だけでなく周囲も危険に巻き込み事故を引き起こす原因にもなります」と、それぞれウェブサイト上で注意喚起している。ただしこれは、あくまでもマナーの範囲にとどまっており、強制力はない。
現に、今でも歩きスマホをしている人の姿は頻繁に見かける。最近では、こうした人にわざとぶつかって、「けがをした」などと文句をつけて金銭を要求する悪質な犯罪も問題になってきた。
東京都では5年間で193人が救急搬送
東京消防庁は、2012年~16年の5年間、同庁管内における「歩きながら」「自転車に乗りながら」スマホを操作していた際の事故で、少なくとも193人が救急搬送されたとサイト上で説明している。「ぶつかる」という事故が半数に迫る88人となっている。年代的に見ると、搬送された人数が最も多かったのは40歳代だった。次いで20歳代、30歳代と続く。歩きと自転車両方を含む数だが、働き盛り世代が「ながらスマホ」で事故に巻き込まれるケースが顕著だ。
場所では「道路・交通施設」が154人と断トツで、うち駅での事故が42人。ホームからの転落事故は13人と決して少なくない。
全国の鉄道各社では2017年11月1日~30日、「やめましょう。歩きスマホ。」と題したキャンペーンを実施する。駅構内や車内にポスターを掲示するなどして、乗客への啓発を図る。
それでも、なかなか歩きスマホをやめない人が多いのも事実だ。東京都港区では、区民から、歩きスマホを含めたスマホの迷惑使用について条例での禁止と罰金化を求める意見が寄せられた。区側はサイトで、歩きスマホについて「問題あり」と認めつつ、現段階では注意喚起や啓発活動の継続によりルールを守るよう呼びかけていく姿勢を示している。