プロ野球のシーズンで最も優れた先発完投型投手に贈る「沢村賞」の選考に、米ロサンゼルス・ドジャースのダルビッシュ有投手が一石を投じている。
受賞した巨人・菅野智之投手に「文句なし」としつつ、最終選考まで残った西武・菊池雄星投手とあわせ「両方素晴らしいわけですから2人でいいでしょう」としている。「2人同時受賞」自体は選考過程でも持ち上がったようだが、ダルビッシュの考えは――。
「別リーグですから」
菅野の沢村賞受賞は2017年10月30日に発表された。最多勝と最優秀防御率のリーグ2冠も達成していた。ダルビッシュがツイッターで「菊池雄星選手沢村賞でいいんじゃないですか?」と投稿したのは受賞発表直後のことだった。
同賞の選考基準は(1)15勝以上(2)150奪三振以上(3)完投10試合以上(4)防御率2.50以下(5)投球回数200イニング以上(6)登板25試合以上(7)勝率6割以上――の7項目。菅野は完投数と投球回数以外の5項目をクリアしていたが、これは菊池も同様で、最終選考はこの2人に絞られていた。2人の成績を以下に並べると(菅野/菊池の順)、
(1)勝敗...17勝5敗/16勝6敗
(2)奪三振...171/217
(3)完投試合...6/6
(4)防御率...1.59/1.97
(5)投球回数...187回3分の1/187回3分の2
(6)登板試合...25/26
(7)勝率....773/.727
ダルビッシュはあくまで「菅野選手の受賞には文句なしなんですけどね」と敬意を示しつつ、「2人がすごい数字ですし、別リーグですから2人受賞がベストだと考えています」と菊池との同時受賞を提案した。
「打てないピッチャーの代わりに打撃のスペシャリストが入る」
「別リーグ」という点については、「そもそもセリーグとパリーグの成績は比べられないです」とも述べている。大きな理由はパ・リーグのDH(指名打者)制。「打てないピッチャーの代わりに打撃のスペシャリストが入るわけですから同じなわけないです」と、パ・リーグのほうが守りづらいことを示し、セパの投手を同列に並べることに懐疑的だ。
5人の選考委員の中でも、ダルビッシュに近い考えはあったようだ。読売新聞31日朝刊によると、山田久志氏は「(投手には不利となる)指名打者制のパ・リーグであることを加味するべきだ」、平松政次氏は「甲乙つけ難く、ダブル受賞を考えてもよい」との意見を示したという。
ただ最終的には、ベストワンの投手を選ぶという方向性のもと、菅野1人で一致した。31日の日刊スポーツによると、堀内恒夫委員長は「菅野君は防御率と勝利数がセ、パを通じても最高。残念ながら菊池君にはなくて少し差があった」と話した。リーグは異なるが成績を並列に比べた形ともとれる。
ダルビッシュは「選考基準の曖昧さもそうだし、なにより選考委員に決めさせるのではなく記者の投票制にすればいいのでは?」と選考過程に疑問を投げかけた。選考委員による「主観」を避け、対案として「ベストはNPBとして選考対象の選手の細かいデータを作って記者に渡し、記者に投票してもらうのが1番文句でないです」と提案している。
沢村賞は、巨人で活躍した故・沢村栄治元投手の功績を称えて1947年に創設された。当初はセ・リーグの投手のみが対象だったが、89年からはパ・リーグの投手も対象に入った。2003年はセパから井川慶(阪神)と斉藤和巳(ダイエー)が同時受賞している。