北海道の大部分や青森県に達する可能性
万一、豊渓里から放射性物質が放出されたら、日本海を越えて日本まで飛散するだろうか。この点、2017年10月30日付の韓国「聯合ニュース」が気になるニュースを配信した。
韓国の政府系研究機関、韓国海洋科学技術院の分析として、北朝鮮の6回目の核実験後に放射性物質がどこまで拡散するかをシミュレーションした。セシウム137の大気中濃度の分布をみると、豊渓里を中心に北東へと拡散。北海道の大部分や青森県に達する可能性があるという。ただし記事では、具体的にどの程度の濃度かは示していない。
核実験とは異なるが、放射性物質の飛散で思い出されるのは2011年3月の東京電力福島第一原発事故だろう。国内ではまず原発から北西の方向にある福島県内の自治体へ高濃度の放射性物質が流れ、以降は東北や関東でも観測された。海外では東アジアほか、太平洋を越えて北米、北欧でも検出されたようだが、いずれもごく微量にとどまった。
より多くの国に影響をもたらしたのは、1986年の旧ソ連・チェルノブイリ原発4号炉の爆発事故だ。10日間にわたって放射性物質の放出が続き、欧州各国に飛び散った。国連環境計画(UNEP)と共同研究を行う団体「GRID-Arendal」が公開している、チェルノブイリ原発事故による放射性物質拡散マップを見ると、1平方メートル当たり10~40キロベクレル検出されている国は、北欧フィンランド、ノルウェー、スウェーデンのほかオーストリア、ギリシャ、ドイツ、英国と広範囲だ。単純比較はできないが、東電福島第一原発事故により、2011年7月時点で、原発から約120キロ西にある福島県会津地方のセシウム沈着量が1平方メートル当たり10~60キロベクレルだったと、会津若松市のウェブサイトが2013年9月19日に報告している。
遠方への放射性物質飛散がどの程度健康に影響を与えるかは、何ともいえない。とは言え、北朝鮮の核実験で万一のことがあれば、どの程度の量がどのくらいの期間飛び続けるのか予測は難しい。豊渓里と北海道は直線距離でおよそ1000キロ。GRID-Arendalの地図を見ると、チェルノブイリ原発から1000キロ以上離れた場所でも、放射性物質が飛来している場所は少なくない。