バイク用品メーカーのコミネ(東京都葛飾区)が販売するジャケットの「Amazonレビュー」が、「体張り過ぎ!」などとインターネット上で話題を集めている。
レビューのタイトルは、「事故ってみました」。このジャケットを着ている時にバイク事故に遭った男性が、事故の体験を振り返りながら商品の特徴を説明したものだ。いったい、投稿の意図は何なのか。J-CASTニュースは、この男性に話を聞いた。
事故の瞬間を捉えた写真も
話題のAmazonレビューが投稿されたのは、コミネ社の「JK-579 プロテクトソフトシェル ウインターパーカ‐IFU」という商品だ。投稿者は、愛媛県在住の会社員男性(30)。最高評価の「5つ星」が付けられたレビューの冒頭は、次のようなものだ。
「お互い時速50キロ弱くらいの速度で、当方バイクで直進、相手軽四右折で対向車と右直事故しました。当方の隼(編注・バイクの車名)はフレーム割れて廃車、相手も左リヤドアやフェンダーと足回り破損により全損でしたが身体は歩いて家に帰れるくらいのダメージで済みました」
つまり、「JK-579」のジャケットを着用して事故に遭い、バイクや相手の車は大きく破損したが、自らは大きなケガを負わなかった――というのだ。
そのため投稿者は、ジャケットの防護性を絶賛。とくに、胸部に内蔵されたプロテクターについて「着る手間がかからずに胸部を守れる点を高く評価します」としていた。なおこのレビューには、事故の瞬間を捉えたドライブレコーダー画像も添えられている。
こうしたレビューが投稿されたのは2017年5月15日のこと。その後、あるツイッターユーザーが10月27日、「Amazon史上最も体を張ったレビュー」として投稿の内容を紹介したことで、一躍大きな注目を集めることになった。
事故の経験を活かした今回のレビューについて、ツイッターやネット掲示板では、
「ここまで信用出来るレビューは見たことがありません」
「説得力がありすぎる...!」
「かつてこれほど完璧な実証のあるレビューがあっただろうか」
といった書き込みが相次いでいる。そのほか、このレビューをきっかけに同じ商品を購入した、との報告も出ていた。
「装備の大事さを心から実感しました」
なぜ、事故の体験記のような形で商品レビューを書こうと思ったのか。J-CASTニュースが10月30日、投稿者の男性に話を聞くと、
「今回あのジャケットのおかげで大きな怪我をせずに済みましたので、他のバイク乗りの人にも『いい製品あるよ。』と教えることが出来ればと思い、レビューさせていただきました」
と説明した。
そもそも、投稿者が遭った事故は16年12月に愛媛県内の車道で起きた。信号のない交差点を直進しようとしたところ、対向車線から右折してくる軽自動車と激突。バイクはフレームにヒビが入り修理が難しい状態となったが、自らは下半身の打ち身程度のけがで済んだ。なお過失の割合は相手が100%だったという。
投稿者はもともと、バイクのジャケットに特にこだわりがあったわけではないというが、「事故に遭ってその恩恵に預かってからは装備の大事さを心から実感しました」と振り返る。
その上で、レビューを投稿したジャケットを製造するコミネ社については、
「コミネさんはバイク用品の中では比較的安価な部類ですが、きちっと仕事を果たしてくれたので非常に良いイメージがあります」
としていた。ちなみに、レビューに掲載していた事故の瞬間をおさめた画像は、事故で衝突した車の後続車がドライブレコーダーで撮影していた動画のワンシーンだという。
なお、レビューのタイトルは「事故ってみました」としているが、決してわざと事故を起こしたわけではないという。そのため投稿者は、
「故意に事故を起こしたのでは?と取られる方もいらっしゃったので、タイトルをつけるときはしっかり考えないといけないと学習しました」
とも訴えていた。
ジャケット販売元の反応は...
ちなみに、話題となったコミネ社のジャケットとはどんな商品なのだろうか。J-CASTニュースが10月30日、同社の担当者に尋ねると、
「カジュアルに着られるパーカー風のジャケットです。ただ、弊社はプロテクターの品質に力を入れておりますので、見た目は薄手ですがしっかりとした素材のものを使っていることが特徴ですね」
と話した。続けて、今回Amazonのレビューが話題になっていることを伝えると、「初めて聞きました」と驚いた様子。その上で担当者は、
「まずは、事故に遭われた方に大きなけがが無くて良かったです。このレビューをきっかけに、オートバイ装備の大切さがライダーの皆さんに広く伝われば、私どもとしても嬉しいですね」
と話していた。なお、このレビューによって売り上げが増えたかどうかについては、「とくに実感はありません」としていた。