慎重を期すためのビデオ判定が、思わぬ波紋を広げている。
プロ野球日本シリーズ第2戦、ソフトバンクの攻撃で起きた本塁クロスプレーは、当初アウトの判定がリプレー検証の結果、セーフに覆った。これで入った1点が決勝点となり、横浜DeNAは2連敗を喫した。
「タイミング的にはアウトなんですよね、たぶん」
「今宮神の手」(日刊スポーツ)
「今宮『神の手』決めた」(デイリースポーツ)
「神タッチ」(サンケイスポーツ)
2017年10月30日付のスポーツ紙一面には「神」が、溢れた。ヤフオクドームで29日に行われたソフトバンク対DeNAの日本シリーズ第2戦は、ソフトバンク1点ビハインドの2対3で迎えた7回ウラの攻撃で、この試合の分水嶺を迎えた。
2死満塁で打席に立った5番・中村晃外野手が右前適時打で3塁走者が生還、さらに2塁走者の今宮健太内野手がヘッドスライディングで飛び込み、本塁に左手を伸ばした。その瞬間に、バックホームを捕球したDeNA・戸柱恭孝捕手がミットを目一杯伸ばしてタッチした。球審はこのクロスプレーにアウトの判定をくだした。だが、ソフトバンク・工藤公康監督がすかさず抗議。長いリプレー検証が始まった。
フジテレビの中継で解説に座った稲葉篤紀氏は「タイミング的にはアウトなんですよね、たぶん。しかし、(捕手が)タッチしたところが(走者の)手の先なのか。手の甲なのか、つまりホームに触れてからタッチしたのか」と解説。中継では360度カメラをはじめ、複数の角度からリプレーが何度も流された。
解説の井口資仁氏は「どちらとも言えないですね。これだけのカメラをもってしても、どちらとも言えない」と判断しかねていた。ただ、自身の目から見て判定はどうかと問われると、「僕は捕手のグラブが少し浮いているのかなというところ」と、セーフと捉えたようだ。
一方、稲葉氏は「(今宮の)指先が少し浮いている分、捕手のミットに指先がのってしまっているように見えますよね」と、アウトの見方。もう1人の解説・大矢明彦氏も「私はアウトです」と明言。迷いつつも、解説陣3人中2人が当初の球審の判定どおりアウトとみていた。
「捕手のミットが浮いたところに、(今宮の)左手がすっと入った」
だが、7分間の検証の結果、判定は覆った。審判団からは「リプレー検証の結果セーフとし、2死2、3塁で再開します」とだけ説明がなされて再開。このままソフトバンクが4対3で勝利し、今宮のクロスプレーが決勝点となった。
29日の「SPORTSウォッチャー」(テレビ東京)では、DeNA元監督・中畑清氏がクロスプレーのシーンを振り返った。「捕手のミットが浮いたところに、(今宮の)左手がすっと入ってきて、(捕手の)タッチはその後に交差している」と、上記の稲葉氏とは手の位置が逆の見方だった。
ツイッター上ではリプレー検証をめぐって意見が錯綜。クロスプレーの瞬間をとらえた報道写真を見て
「昨日の映像だと、何かモヤモヤしたけど...この写真だとセーフだね」
「この写真を見ると、セーフだな」
「うーんやっぱりセーフだと思う」
とする投稿が多数あった。一方で
「一旦アウトがリプレーで覆って決勝点。こりゃ尾を引くわ」
「あれは、世紀の誤判定だね。どうみても、アウト」
「左手浮き気味だしアウトだと思うけどな。どっちとも取れる場合は最初のジャッジでいいと思うよ」
と一夜明けてもアウトの見解が多数あった。
審判団は「かなりの枚数を流して確認できた」と判定に自信を見せている。またDeNAのラミレス監督は、「あれだけ時間をかけて検証したのだから、判定通りセーフだと思う」と判断を尊重した。