「体臭」が恋に・夫婦仲に・昇進にも影響! ニオイとどう付き合えば幸せになれる?

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【クローズアップ現代+】(NHK)2017年10月25日放送
体臭気にしすぎ社会! ニオイで降格・昇進も!

   最近、体臭に敏感になる風潮が広がっている。社員に体臭ケアを科す企業が増え、昇進に影響する事態になった。

   「相手の体臭が気になると恋が引いてしまう」「自分の体臭で周囲の人がくしゃみをしているのでは」と悩む若者も珍しくない。ニオイとどう付き合っていけばよいのか?

  • ニオイの7割は「気にしすぎ」
    ニオイの7割は「気にしすぎ」
  • ニオイの7割は「気にしすぎ」

AKB48松村香織の「オタク臭」批判ツイートの波紋

   番組では冒頭、人気アイドルグループAKB48の握手会の「異様な光景」を映した。ファンは脇の下や胸などに消臭スプレーを吹き付けてからメンバーと握手するのだ。これは2017年8月、メンバーの松村香織さんがツイッターで、体臭ケアをしようと、こう呼びかけたことがきっかけだ(要約抜粋)。

「握手会で深刻な問題です。苦情が入りました。並んでいる女の子から、ニオイに耐えられないからどうにかしてほしいと。自分の体臭は自分じゃ中々気付けません。この2つのアイテム(注:消臭スプレー)で対策しよう!」

   これには、賛否をめぐり大炎上状態となったが、現在ではファンは「カオリン(松村さん)に従うよ~」と消臭している。

   御主人の靴下のニオイをクンクン嗅ぐと、気絶する犬型ロボット、腋の下にスマホをかざすとニオイの数値が出るアプリ、消臭機能がついたスーツや下着など、現在多くのニオイ関連グッズが販売されている。番組がニオイに関するアンケートを行なったところ「口臭が心配で他人と会話できない」「会社の上司のニオイが気になって席を替えてもらった」「取引先から体臭へのクレームがあった」などの声があった。

社員の人事評価に口臭・体臭対策の取り組み度が

   化粧品会社が開催する「においケアセミナー」には、数十社の企業から社員が派遣され、ニオイケアの講習を受ける。セミナーに参加したメガネ店では、社員に体臭や口臭対策を義務付け、昇進や人事の際の評価項目に入っている。きっかけは従業員のニオイに対する客からのクレームだ。接客担当の矢倉サトシさん(45歳)は、汗をかいたらこまめにシートで拭き、ランチやおやつの後には必ず歯磨き。女性社員に頻繁に消臭スプレーをかけてもらう。努力の甲斐があって、今年夏めでたく店長に抜擢された。

   若い世代の中には、体臭に敏感なあまり、恋や友人関係に悩む人が珍しくない。著述家・日本大学非常勤講師の湯山玲子さんは、若者の行動や心理を調べるために定期的に話を聞く。雑談の中で若者たちが語った。

20代女性「相手の体臭が気になり、恋がさめてしまうことが多いです。あっ、ダメと思うと、どれだけ良い人でも一緒にいられなくなります」
20代男性「他人のにおいにイライラしてしまう。自分の縄張りを侵されている感じです」
湯山玲子さん「今の若者は、体臭がする人に対し自動的に敵意を抱き、排除する心理が働く気がします」

   体臭の悩みや治療を行う五味クリニックに20代の男性が訪れ、「周りの人がくしゃみやせきをすると、自分の体臭のせいだと思ってしまい、人付き合いができません」と悩みを打ち明けた。五味常明院長は、男性の耳垢やワキガを調べニオイの強さを分析した。普通の人と変わらない体臭だった。

五味院長「相談にくる人の7割はそれほど体臭が強くない人です。スメルハラスメントで周囲に迷惑をかける害より、自分が臭っていると悩み、人間関係を築けないでいる害の方が深刻です。また、体臭が強い人でも、多くのケースで治療により改善することができるのです」

祖母と一緒に暮らした人には加齢臭は「懐かしい」

   武田真一キャスターが、臭いが人間の心理に与える影響を研究している東北大学の坂井信之教授に聞いた。

――体臭に敏感になる人が増えているのはなぜでしょうか。

坂井教授「消臭対策が進み、家庭の中でニオイがほとんどなくなったことが原因です。そのため、外に出るとニオイが気になってしまうのです。たとえば、加齢臭を嗅いだことがない人にとっては、『クサイ!』と不快に感じますが、祖父母と一緒に暮らした人にとっては、『お婆ちゃんのニオイだ。懐かしい』とポジティブに受け取ることがあります」

――先ほど、若い女性が「体臭が気になると、いい人でも好きになれない」と言っていましたが。

坂井教授「私の大学の学生にアンケートをとると、好きになる条件は『見た目』が多く、嫌いになる条件は圧倒的に『ニオイ』でした。嫌いになるとニオイも嫌いになり、また、ニオイがあるから嫌いになるという悪循環の側面があります」

――ニオイのない人間なんてどこにもいません。

坂井教授「筑波大学が行った実験では、ボトルに黄色いシールを貼り、中にリンゴを入れたものを嗅いでもらうと、半分以上の人がバナナと答えたそうです。黄色いシールでバナナがイメージされたのです。ニオイはあやふやなもので、そのニオイを出している物や人のイメージが結びつくため、人の場合は、ニオイを出している人との人間関係が圧縮されて出てきます。つまり、その人との人間関係が良いと、ニオイを悪く感じない可能性もあります」

   番組では最後に、夫のニオイを気にしすぎたことから、妻が「ビョーキ」になったある家庭の悲喜劇を紹介した。数年前、妻と娘が夫の体臭をからかったことをきっかけに、夫は体臭を気にして、香りの濃いシャンプーやスプレーを使うようになった。このため妻は、スプレーの香りに含まれる成分に刺激され、化学物質過敏症になってしまった。夫が近づいてくるだけでくしゃみがでるばかりか、舌がしびれて食べ物の味が感じなくなった。

妻「もう毎日夫婦ゲンカばかりです。私と娘が、冗談で主人に汗臭いと言ったことが悪かったのです。今になってみるとからかい過ぎたかも」
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