祖母と一緒に暮らした人には加齢臭は「懐かしい」
武田真一キャスターが、臭いが人間の心理に与える影響を研究している東北大学の坂井信之教授に聞いた。
――体臭に敏感になる人が増えているのはなぜでしょうか。
坂井教授「消臭対策が進み、家庭の中でニオイがほとんどなくなったことが原因です。そのため、外に出るとニオイが気になってしまうのです。たとえば、加齢臭を嗅いだことがない人にとっては、『クサイ!』と不快に感じますが、祖父母と一緒に暮らした人にとっては、『お婆ちゃんのニオイだ。懐かしい』とポジティブに受け取ることがあります」
――先ほど、若い女性が「体臭が気になると、いい人でも好きになれない」と言っていましたが。
坂井教授「私の大学の学生にアンケートをとると、好きになる条件は『見た目』が多く、嫌いになる条件は圧倒的に『ニオイ』でした。嫌いになるとニオイも嫌いになり、また、ニオイがあるから嫌いになるという悪循環の側面があります」
――ニオイのない人間なんてどこにもいません。
坂井教授「筑波大学が行った実験では、ボトルに黄色いシールを貼り、中にリンゴを入れたものを嗅いでもらうと、半分以上の人がバナナと答えたそうです。黄色いシールでバナナがイメージされたのです。ニオイはあやふやなもので、そのニオイを出している物や人のイメージが結びつくため、人の場合は、ニオイを出している人との人間関係が圧縮されて出てきます。つまり、その人との人間関係が良いと、ニオイを悪く感じない可能性もあります」
番組では最後に、夫のニオイを気にしすぎたことから、妻が「ビョーキ」になったある家庭の悲喜劇を紹介した。数年前、妻と娘が夫の体臭をからかったことをきっかけに、夫は体臭を気にして、香りの濃いシャンプーやスプレーを使うようになった。このため妻は、スプレーの香りに含まれる成分に刺激され、化学物質過敏症になってしまった。夫が近づいてくるだけでくしゃみがでるばかりか、舌がしびれて食べ物の味が感じなくなった。
妻「もう毎日夫婦ゲンカばかりです。私と娘が、冗談で主人に汗臭いと言ったことが悪かったのです。今になってみるとからかい過ぎたかも」