社員の人事評価に口臭・体臭対策の取り組み度が
化粧品会社が開催する「においケアセミナー」には、数十社の企業から社員が派遣され、ニオイケアの講習を受ける。セミナーに参加したメガネ店では、社員に体臭や口臭対策を義務付け、昇進や人事の際の評価項目に入っている。きっかけは従業員のニオイに対する客からのクレームだ。接客担当の矢倉サトシさん(45歳)は、汗をかいたらこまめにシートで拭き、ランチやおやつの後には必ず歯磨き。女性社員に頻繁に消臭スプレーをかけてもらう。努力の甲斐があって、今年夏めでたく店長に抜擢された。
若い世代の中には、体臭に敏感なあまり、恋や友人関係に悩む人が珍しくない。著述家・日本大学非常勤講師の湯山玲子さんは、若者の行動や心理を調べるために定期的に話を聞く。雑談の中で若者たちが語った。
20代女性「相手の体臭が気になり、恋がさめてしまうことが多いです。あっ、ダメと思うと、どれだけ良い人でも一緒にいられなくなります」
20代男性「他人のにおいにイライラしてしまう。自分の縄張りを侵されている感じです」
湯山玲子さん「今の若者は、体臭がする人に対し自動的に敵意を抱き、排除する心理が働く気がします」
体臭の悩みや治療を行う五味クリニックに20代の男性が訪れ、「周りの人がくしゃみやせきをすると、自分の体臭のせいだと思ってしまい、人付き合いができません」と悩みを打ち明けた。五味常明院長は、男性の耳垢やワキガを調べニオイの強さを分析した。普通の人と変わらない体臭だった。
五味院長「相談にくる人の7割はそれほど体臭が強くない人です。スメルハラスメントで周囲に迷惑をかける害より、自分が臭っていると悩み、人間関係を築けないでいる害の方が深刻です。また、体臭が強い人でも、多くのケースで治療により改善することができるのです」