都市部の通勤・通学の足となる電車や地下鉄だが、ラッシュ時にはしばしば運行が遅れる。事故で長時間ストップする不運に巻き込まれることもある。
そんな時に限って腹部に痛みが――。電車は動かない、でもトイレに行きたい。多くの人を悩ませる突然の腹痛の正体について、専門医に聞いた。
腹痛と便通の異常が慢性的に繰り返される
台風21号の通過が朝の通勤時間帯と重なった首都圏では2017年10月23日、鉄道各線で続々と運休や遅れが出た。JR宇都宮線では、送電トラブルで列車が立ち往生し、乗客が約2時間にわたって車内に閉じ込められた。
この4日前、東京都と神奈川県を結ぶ東急田園都市線では停電が発生。全線で一時運転見合わせとなり、同線が乗り入れる東京メトロ半蔵門線を含めて沿線の駅では大勢の人があふれた。
鉄道での移動機会が多い都会の人にとって、こうしたトラブルは避けられない。それだけに、動きがとれない電車の中で体調不良を起こしたくない。特に突発的な腹痛は「悪夢」。車両にトイレを設置していない電車もあるからだ。
大腸肛門疾患を専門とする「ときとうクリニック」(さいたま市)の時任敏基院長に取材すると、「通勤中の突然の腹痛に悩んでいる人のほとんどが、『過敏性腸症候群(IBS)』と診断される患者さんではないかと考えられています」と説明した。特に若年層で増加している疾患で、同クリニックにも多くの患者が通院しているという。
IBSでは、腹痛や腹部不快感などの消化器症状と、便通の異常が慢性的に繰り返される。腹痛は多くの場合下腹部で、特に左側が特徴的。排便をすると楽になることが多い。便通異常は便秘や下痢、あるいはその繰り返しだ。
では電車内でIBSの症状が出たら、どう対処すればよいか。特に電車が遅延や立ち往生した場合、トイレにたどり着くまで時間がかかる。時任医師は「本当に難しい」として「『落ち着いて深呼吸』程度しかないのでは」とのこと。一度発症すると、急激な痛みを解消するのは困難といえそうだ。ただ、予防措置はいくつか考えられる。