岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
ニューヨーク市民が恐れる、銃隠し持つ観光客

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「マンハッタンを歩けなくなる」

   観光客の多いニューヨーク市は今、頭を抱えている。

   全米50州で、どの州からも人目に触れないように銃を持ち込むことができるようにと、NRAが積極的に米議会に働きかけているからだ。トランプ大統領もこれを支持している。

   今、他州から銃を携帯してニューヨーク市を訪れる旅行者が、市内の空港で逮捕され、多額の弁護士費用を支払わされたりしている。こうした煩わしさから解放され、全米どこでも自己防衛のために銃を携帯できるようにするためだ。

   ニューヨーク市警は、「これが実現したら、この街は危険なことになる。許可や訓練なしで、あるいは重い罪を犯した者でも、銃の携帯を認めている州がいくつもあるからだ」と警告している。

   リベラル派の多いニューヨーカーたちも、「そんな法律ができたら大変。おちおち、マンハッタンを歩けなくなる」と危機感を覚えている。

   かなり安全になったものの、物騒だと思われがちなニューヨーク市に、自衛のために銃を持ち込みたくなる気持ちは理解できなくもない。しかし、多くのニューヨーク市民にしてみれば、服の下やバッグに銃を忍ばせている観光客のほうがよっぽど物騒なのである。(この項終わり)(敬称略。随時掲載)


++ 岡田光世プロフィール
岡田光世(おかだ みつよ) 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計35万部を超え、2016年12月にシリーズ第7弾となる「ニューヨークの魔法の約束」を出版した。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。


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