インフルエンザの本格的な流行シーズンが近づいてきたが、兄や姉がいる幼児はインフルエンザ症状が悪化し、入院するリスクが2倍に高まるという研究結果が明らかになった。
英ロンドン大学の研究チームが約40万人の子どもを対象に大規模調査を行ない、欧州呼吸器学会誌「European Respiratory Journal」(電子版)の2017年9月28日号に発表した。研究者は上の子どもを持つ妊婦に、生まれてくる子のために妊娠中のワクチン接種を勧めている。
兄姉が2人、7月~12月生まれの子が危険
ロンドン大学のプレスリリースによると、研究チームは2007年10月~2015年4月にスコットランドで生まれた子どものほぼ全員に当たる約40万人の調査を行った。匿名の入院記録と検査データを用いて、どの子どもがインフルエンザ陽性であったかを調べ、誕生月、早産かどうか、ほかに病気があるかどうか、そして兄や姉がいるかどうかなどを比較した。
その結果、インフルエンザで入院した生後6か月未満の子ども全体の半数に兄姉がいた。生後6か月未満の子どもがインフルエンザで入院する割合は、いない子どもに比べ2倍以上高かった。兄姉が1人いる場合の入院率が1000人あたり約1回なのに対し、兄姉が2人いる場合の入院率は約2回と、兄姉の数が増えるにつれ入院リスクが上昇することもわかった。
また、特に誕生月が7月~12月の子どもは、低月齢のうちにインフルエンザの季節(11~3月)が始まるため、入院リスクが高かった。先天的な心臓や肺の病気も入院リスクの上昇に関連していたが、入院した子どものうち、これらの病気を持っていたケースはごく少数だった。研究チームリーダーのピア・ハードリッド博士は、プレスリリースの中で「症状が悪化して入院するケースのほとんどが、2つの要因と関係していました。兄姉がいるかどうかと、月齢の低さ、つまり誕生月です」と語っている。
上に子がいる妊婦は妊娠中に予防接種を
なぜ、兄姉がいるとインフルエンザの症状が重くなるのだろうか。ハードリッド博士はこう説明している。
「子どもは、インフルエンザのような呼吸器の病気を引き起こすウイルスの非常に強力な感染源なのです。兄姉があちこちからウイルスを持ち帰ってきます。英国で導入されている鼻スプレーのワクチンは、授乳を受けている赤ちゃんや兄姉を守るうえで、効果を上げています。ワクチンの接種は、6か月未満の子どもには認められていません。しかし、私たちの研究では兄姉のいる6か月未満の子どもが重症化することが明らかになりました。上に子どもを持つ母親は赤ちゃんが生まれてからできることは限られています。妊娠中にワクチンを接種しておくことを勧めます」
日本では胎児への影響を心配し、妊娠中のワクチン接種を控える妊婦が少なくない。国立成育医療研究センターはウェブサイト「妊娠と薬情報センター:インフルエンザワクチン」の中で、こう述べている。
「日本で使用されるインフルエンザワクチンは、生ワクチンではないので重篤な副作用は起こらないと考えられ、一般的に妊娠中のすべての時期において安全であるとされています。妊娠初期に従来のインフルエンザワクチンを接種しても先天性異常のリスクがないという研究結果もあります」