「現場の自律性」の功罪
10月19日に再び記者会見を開いた西川社長は、「日本のものづくりは、現場の自立性や強さが基本だ。ただし、それを管理する側がお任せでいいというわけにはいかない」と述べ、現場任せにしすぎたことが一因であるとの認識を示した。そのうえで、検査員の不足が背景にあることも認めた。
問題の背景として、「日産は検査員の数が足りず、やりくりしていたのではないか」という声は同業他社に根強い。実際、日産で資格を持つ検査員は約300人なのに対し、国内生産が日産より少ないマツダは約600人。日産では長く経営トップを務めたカルロス・ゴーン会長の下、世界の工場で生産効率を競わせてきた。その過程で、国内工場の生産効率を高めることに注力しすぎ、法令遵守体制が次第におろそかになった可能性も否定できない。
経済同友会の小林喜光代表幹事は10月18日の記者会見で、日産や神戸製鋼所など相次ぐ製造現場での不祥事に、「企業が信頼を築くには何十年もかかるが、失うのは一瞬」と苦言を呈した。日産の信頼回復への道のりは遠い。