中高年男性に前立腺がんが急増しているが、北海道大学が前立腺がん細胞の増殖のスイッチ役となるタンパク質の発見に成功した。このタンパク質をターゲットにした薬を開発すると、転移が恐ろしい前立腺がんの治療薬の開発につながるという。
研究成果は国際生物学誌「The Journal of Biological Chemistry」(電子版)の2017年10月5日号に発表された。
自覚症状が出た時は骨やリンパ節に転移している場合が
北海道大学の発表資料によると、前立腺がんは50歳代から急速に増え始める。加齢による男性ホルモンのバランスの崩れや、生活習慣の乱れなどが原因で発症するとみられる。近い将来、男性のがん死亡の1位となることが予想されている。初期には自覚症状がほとんどない。がんが膀胱や尿道を圧迫、排尿が難しくなる自覚症状が出て発見される場合が多いが、かなり進行して骨やリンパ節に転移し、悪性化しているケースが少なくない。
今回、研究チームは、前立腺がん患者の細胞を分析した結果、「STAP-2」と「EGFR」という2つのタンパク質が結びつくと、がん細胞増殖のスイッチの役割を果たすことを突きとめた。研究チームの松田正教授らは発表資料の中で「マウスの実験で、このSTAP-2とEGFRの結合を阻止すれば、がん細胞の増殖を抑えられることがわかりました。2つのタンパク質を標的とした治療薬を開発すれば、既存の抗がん薬との併用により前立腺がん治療の有力な武器になりえると考えます」とコメントしている。