世界保健機関(WHO)の事務局長テドロス・アダノム氏は2017年10月20日、ウルグアイで開催されていたWHO主催の国際会議上で、強権的な独裁体制を取っているジンバブエの大統領ロバート・ムガベ氏をWHOの親善大使に任命すると発表した。
「自らの病気を国外で治療するような人物」
アダノム氏が驚きの発表を行ったのは、「非感染性疾患(NCD)に関する国際会議」だ。 10月20日付の米CNNの報道によると、各国政府の要人や国連機関、市民団体などから集まった400人の参加者の前で、「ムガベ大統領をアフリカにおけるNCDの親善大使にする」と語ったという。
アフリカ地域における影響力のある人物を選出したいとの意図があったと思われる。
ムガベ氏は1987年以来ジンバブエの大統領で居続けている。これまでに行われた大統領選挙で度々国内の野党勢力に敗北しているものの、徹底的な弾圧によって地位を維持しているとされ、国際社会から批判を受けている。
経済政策の破たんから、ジンバブエ国内の医療環境や衛生状態も悪化していると見られており、コレラやエイズの流行も起きていた。
そんなムガベ氏を親善大使に任命するというアダノム氏の発言に対し、英国政府やカナダ政府は報道官を通じ「自らの病気を国外で治療するような人物をWHOの親善大使にするのか」と反対する姿勢を表明。世界心臓連盟(WHF)や国連の人権監視団体「UN Watch」も公式サイト上でWHOの発表を非難した。
前述の会議に参加していた「非感染性疾患連盟(NCDA)」をはじめとする32団体も連名で、
「これまでの人権侵害の証拠やジンバブエ国内の保健衛生へのアプローチを考えると、ムガベ大統領の任命はNCDのWHO親善大使として正当ではないと考えている」
と強い非難声明を発表。
こうした一連の非難を受け、10月22日にWHOは公式サイト上で「ムガベ氏の親善大使任命を取りやめる」とする声明を掲載している。