神戸製鋼所のアルミ・銅製品などの検査データ改ざん問題は、新たに銅製品で日本工業規格(JIS)を満たさない法令違反の疑いがあることが判明した。加えて、過去の不正を組織ぐるみで隠していた隠蔽工作も発覚し、同社の法令順守体制や社員のモラルが改めて問われる事態になっている。
「今まで法令違反はないと言ってきたが、その後の調査でJISに関して法令違反になるものがあることがわかった。我々の信頼は大きく失墜した」
JIS違反の疑い
神戸製鋼の梅原尚人副社長は、2017年10月20日の記者会見で陳謝した。新たにJIS違反の疑いが浮上した銅製品は神奈川県の子会社が製造する空調用や給湯用の銅管で、8日に発表した一連の不正な品目に含まれていた。その時点で神戸製鋼は「法令違反はない」と主張していたが、JISの認証機関である日本品質保証機構の審査を10月19日から受け、「JISを満たしていないものがある」と指摘されたという。
また、山口県下関市の長府製造所では、アルミ製品の寸法が注文の仕様書の寸法をはずれていたのに、検査データを書き換えて出荷していた。この事実は2017年8月までの同社の社内調査では報告されていなかった。その後、社内の相談窓口に内部告発があり、10月19日に不正の事実を確認したという。
長府製造所では工場の管理職を含む従業員が不正の発覚を恐れ、工場の自主点検や本社の緊急監査でもデータ書き換えの事実を報告していなかった。
一連の調査の信憑性が疑われる事態
さらに今回、千葉県の鋼板加工会社で、取引先が要求する厚板加工品の厚さを測定しなかったり、データを捏造したりしていた事実も新たに発覚した。実際の板厚は満たしており、「安全上の問題は生じていない」という。こちらは内部告発ではなく、社内の自主点検で見つかった。
神戸製鋼は8月末まで各工場や子会社の自主点検や全社の緊急監査を行い、一連の不正を把握してきたが、今回、内部告発で隠された不正があることが判明した。一連の調査の信憑性が疑われる事態だが、梅原副社長は「この一件で全体の自主点検の有効性が否定されることはないと思う」と弁明。「こういうことがあったので、第三者の外部の委員からなる外部調査委員会を導入し、徹底的な原因の究明と再発防止策を検討したい」と述べたが、新たな不正の続出で外部の第三者委員会を設置せざるを得なくなったのが実情だ。第三者委員会の設置は、経済産業省も強く要請した。これまでは川崎博也・会長兼社長をトップとする社内調査だったが、経産省は「身内同士の調査では真相解明は限界」と判断したわけだ。
相次ぐ不正の発覚を受け、梅原副社長は10月20日の会見で「もう(不正が)まったくありませんとは言い切れない。ありうるかと思う」と認めざるを得なかった。同社は新たな不正が発覚すれば、経営陣が記者会見し、速やかに公表する方針だ。内部告発などが相次げば、新たな不正がさらに見つかる可能性がある。