「ほとんど効果がないと見なされる」
研究結果を読むと、特に報道が間違っているわけではなさそうだが、NHSは何を問題視したのか。まず報道内容だ。今回の研究はシロシビンを投与したのであって、マジックマッシュルームを食べているわけではないのだが、「Daily Mail」は「マジックマッシュルームを食べることはうつ病の治療に役立つ」と報じ、NHSは「違法薬物の摂取をすすめている」と非難している。
また、研究内容に疑問がある。対照群、つまりシロシビンを投与されていないグループが設定されておらず、気分やうつ病スコアの改善、脳の血流量の変化が本当にシロシビンによるものだったのか、結果からはわからないのだ。対象が存在しない以上、偶然今回の研究では変化しやすい人たちが集まった可能性も否定できない。
結果にも懐疑的で、次のように厳しく指摘している。
「研究の規模がわずか19人という少なさにも関わらず、5週間後にうつ病スコアが改善したのは半数以下の47%で、残りの53%には何も起きていない。この結果は一般的に『ほとんど効果がない』と見なされるものだ」
NHSは英国でシロシビンがうつ病に与える効果を検証する研究が複数行われていることや、その結果次第で新たな治療の選択肢が増える可能性は否定していないが、
「まるでパソコンのように電源をいったん落とし、再起動するという方法が人間の脳で可能なのか、まずはそれを知るための研究が必要だ」
とも発表している。