目と手の反応力アップ、攻撃と防御の能力向上
具体的に、北出氏は、村田選手へのトレーニングが以下のようだったとJ-CASTニュースに語った。2年前、初めて村田選手を検査した際に「目を上下左右に動かす際、顔も動いてしまっていました」。このままだと、わずかな目の動きの遅れが生じて相手のパンチをもらいやすくなる。「寄り目」にする際、右目がやや寄りにくいことも分かった。
北出氏は、村田選手の目と手の反応を鍛えるために、ある器具を用いた。ボタンがランダムに光り、「モグラ叩きゲーム」の要領でそれを押してクリアしていくものだ。最初は1分間に70回程度しか押せなかったが、徐々にスピードが増し、現在では150回までタッチできるように上達した。
また、頭を固定したままメトロノームのリズムにのせて眼球だけを「右、左、右、左」あるいは「上、下、右上、左下」などと動かす練習も行った。これも初めはメトロノームの動きを1分間100回としたが、慣れるにしたがって同150~180回と速度を上げても対応できるようになった。
「寄り目」のトレーニングでは、腕を伸ばして指を1本立て、少しずつ指を顔に寄せながら両目で追った。
村田選手はこうしたメニューをほぼ毎日続けてきた。その効果として北出氏は、
「目と手の反応力が上がり、攻撃してくる相手のパンチをブロックする力、逆に動きのある相手に正確にパンチを当てる力の両方が向上しました」
と話した。
北出氏とともに、村田選手のビジョントレーニングを支援したのがWBA世界スーパーフライ級元王者の飯田覚士氏。「日本視覚能力トレーニング協会」を立ち上げて、その普及に努めている。
飯田氏は2016年「おうちで簡単ビジョントレーニング」(ベースボール・マガジン社刊)を上梓。子ども向けに、日々のトレーニングメニューを紹介している。例えば足が遅い、球技が苦手、ダンスがぎこちない、大縄跳びに入っていけない、さらには本を読むのが遅い、右と左を混乱してよく間違えるといった子は、運動神経ではなく「見る力」に問題を抱えている可能性があると指摘。端的には、視力だけでなく、ものを見て体を動かす総合的な力を高める必要があるという。