おたくのワンコ、やたらに吠えたり、かみついたりしていませんか? 猛々しい犬がいるかと思えば、穏やかで人懐っこい犬がいるのはなぜだろうか。
友好的な犬と攻撃的な犬を分けるのはホルモンの違いであることを米アリゾナ大学のエバン・マクリーン教授(心理学)らのチームが突きとめ、心理学専門誌「Frontiers in Psychology」(電子版)の2017年9月27日号に発表した。ホルモン剤を使った犬の治療に道を開くことができるという。
女性型と男性型、「愛情ホルモン」に2つの違い
同誌の論文によると、米国では年間450万人が犬にかまれる事故にあっている。そのため、「危険だ」として多くの犬が動物保護施設で安楽死させられている。攻撃的な犬は、人間にとっても犬にとっても不幸だ。そこで、マクリーン教授らは、犬の「攻撃性」は2つのホルモンの分泌の違いからくるのではないかという仮説をたて、実験で確かめることにした。
2つのホルモンとは、「オキシトシン」と「バソプレッシン」だ。オキシトシンは、「愛情ホルモン」と呼ばれ、心を癒したり、幸せな気分にしたりする働きがある。人間の女性(動物のメス)が妊娠・出産する時や授乳する時に多く分泌される。赤ちゃんを「愛おしい」「守りたい」と感じる母性愛の源だ。飼い主と犬が遊んでいる時にも双方に分泌される。
バソプレッシンは、人間の男性(動物のオス)が愛おしい女性(メス)に触れる時に出るホルモンだ。バソプレッシンが少ない男性は「浮気性」で、離婚する確率が高いという研究がある。また、ハタネズミの研究では、一夫一妻型の種類のオスはバソプレッシンが多く、乱婚型の種類のオスは少なかった。オキシトシンが女性型の「愛情ホルモン」なら、バソプレッシンは男性型の「愛情ホルモン」といえる。
実験は、動物保護施設や盲導犬・介助犬の訓練センターから多くの犬の提供を受け、次の2つの方法で行なわれた。
(1)動物保護施設から、人間や犬にかみつくなど何度も問題行動の前歴がある犬を集めた。いわば、札付きの「暴れん坊犬」だ。比較のために、それらと同じ犬種のペット犬を同じ数だけ用意した。
犬たちに見知らぬ犬や人間の映像を見せて反応を観察した。すると、「暴れん坊犬」は激しい敵対行動を見せるケースが多かったが、ペット犬でも敵意をあらわにする行動をとるものが少しいた。そして、映像を見せた直後に血液を採取し、2つのホルモンの分泌量を比較した。
(2)犬の訓練センターから盲導犬・介助犬を集めた。そして、(1)とまったく同じ実験を行ない、ホルモンの分泌量を比較した。