ゆっくりした動きの太極拳にスゴイ効果 心臓病のリハビリ、転倒予防、免疫力アップ

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   ゆっくりとした動きと呼吸を繰り返す太極拳が、心筋梗塞などの心臓病患者のリハビリに非常に効果があることが米ブラウン大学の研究で明らかになった。

   心臓発作を起こした人は、恐怖心からリハビリの身体活動を拒否する人が多く、どうしたらリハビリに参加させられるかが課題だった。太極拳を行なうと、参加率が高く、楽しくて他の患者にも勧める人が多いという。研究成果は米国心臓学会機関誌「Journal of American Heart Association(JAHA)」(電子版)の2017年10月10日号に発表された。

  • 太極拳は高齢者に最適な運動
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リハビリ参加者全員が「楽しい」「友人に勧めたい」

   JAHA誌の論文によると、心筋梗塞などの心臓発作を起こした患者は、退院直後は60%以上の人がリハビリを拒否するという。その理由としてリハビリ施設への通院が難しいことがあげられるが、多くの患者は「また発作を起こすのではないか」という身体活動の恐怖心や不快感がある。しかし、体調を回復させるためには、退院直後こそリハビリが重要で、どうやってリハビリに参加させるかが悩みの種だった。

   そこで研究チームは、太極拳をリハビリに取り入れた。心筋梗塞の発作を起こした人や、心筋梗塞を起こす恐れがあるため血栓を取り除く手術をした人が対象だ。全員がリハビリを拒否している29人の患者(平均年齢68歳・男性21人・女性8人)で、太極拳のプログラムに参加してもらうことにした。プログラムは、1回1時間の太極拳を週に2回12週間(3か月)続けるグループと、週に2~3回24週間(6か月)続けるグループだ。参加者には、施設でインストラクターから指導を受けるだけではなく、自宅でも1人でできるよう動作の指導DVDを渡された。

   その結果は、研究チームのエレナ・ブロッチャー教授が論文の中で語ったところによると、

「驚くべき効果でした。みんな楽しみながらリハビリに取り組み、プログラムの出席率が平均で66%と非常に高かったのです。途中でやめた人の多くが、病状の変化や再手術などの事情から続けられなくなった人でした」

という。

   コースの終了時に、健康状態と心理状態の調査を行なった。大半の人は体重が減少し、生活の質(QOL)が向上していた。アンケート調査などの結果から次のような太極拳の効果が明らかになった。

(1)最後までプログラムを続けた人は、全員が「楽しかった」「友人やほかの患者に勧める」と回答した。
(2)プログラム開始直後は軽度の筋肉痛がみられるケースがあったが、副作用のような症状はまったくなかった。
(3)体力テストの結果では、3か月コースでは有酸素運動能力が向上することはなかったが、6か月コースでは向上した。また、6か月コースでは太極拳の運動強度を中程度から高強度まで上げることができた。
(4)太極拳は、リハビリを特に恐れて嫌う女性には魅力的で、男性より出席率が高かった。
(5)太極拳は、リラクゼーションとゆっくりした呼吸を繰り返すため、一部の患者で心臓機能の改善がみられた。

   こうした結果から、ブロッチャー教授は論文の結論でこう語っている。

「太極拳は、心臓病のリハビリセンターの運動メニューの中にぜひ取り入れるべきだと考えます。もちろん、太極拳だけでは、すべてのリハビリ効果を担うことはできませんが、より高強度の運動メニューに対する橋渡しの役目を果たすことができるでしょう」
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