「朝茶は福が増す」という諺(ことわざ)があり、緑茶には多くの健康効果があることが昔から知られているが、毎日飲むとダイエットになるという嬉しい研究が発表された。
米カルフォルニア大学の研究チームが、欧州栄養学会機関誌「European Journal of Nutrition」(電子版)の2017年9月30日号に発表した。マウスの実験だが、緑茶や紅茶のエキスを飲むとカラダの代謝がよくなり、腸内の「やせ菌」が増えるというのだ。
米カリフォルニア大がマウスの実験で立証
カリフォルニア大学のプレスリリースによると、同大学ロサンゼルス校人間栄養研究所のチームは、緑茶と紅茶の成分がどのように腸内細菌を変化させ体重減少などの健康効果を与えるかを調べるため、マウスを次の4種類のエサを食べるグループに分け、4週間にわたって観察した。
(1)高脂肪・高糖類の肥満食。
(2)低脂肪・高糖類の普通食。
(3)高脂肪・高糖類の肥満食に緑茶の抽出物を混ぜる。
(4)高脂肪・高糖類の肥満食に紅茶の抽出物を混ぜる。
すると4週間後、(3)と(4)の緑茶と紅茶の抽出物を混ぜたエサを食べたマウスは、肥満食を与えられたにもかかわらず、(2)のダイエット食を食べたマウスとほぼ同じ程度の体重に抑えられた。そして、緑茶と紅茶を食べたマウスの大腸と肝臓組織からサンプルを採取して調べたところ、次のことがわかった。
(1)大腸の腸内細菌では、「バクテロイデス属」の腸内細菌だけが増えていた。バクテロイデスは、俗に「やせ菌」と呼ばれる細菌で、人間の研究でもやせている人の腸内に多く生息する細菌として知られている。カラダの代謝を促進し、脂肪の燃焼を早める働きをするといわれる。
(2)肝臓のエネルギー代謝の指標となる細胞の脂肪沈着量を調べると、70~291%も代謝が増加していることがわかった。肝臓が代謝を活発化させ、脂肪をどんどん燃やしていたわけだ。
これらの効果は、緑茶と紅茶のポリフェノール(植物由来の抗酸化成分)の働きによるものだという。研究の中心になった人間栄養研究所副所長のスザンヌ・ヘニンブ助教授は、プレスリリースの中でこう語っている。
「私たちの研究は、緑茶と紅茶のポリフェノールが、体重を減らすなどの健康効果を持つ成分を含んでいることを示しています。このポリフェノールは小腸で吸収されるには大きすぎて大腸まで届きます。そして、その成分が、良好な腸内細菌の成長を促し、腸内細菌全体を人間の健康に貢献する方向に変える力を持っていると考えられます」
また、同研究所所長のザオピン・リー教授もこう語った。
「緑茶・紅茶愛好家にとっては、毎日飲み続ける新しい理由ができたわけですね」
緑茶すごすぎ!認知症・血液がん・大動脈瘤、ダウン症にも
緑茶パワーの驚くほど嬉しい健康効果は、ここ1~2年相次いで発表されている。ざっと紹介すると――。
(1)死亡率を下げる:1日に5杯以上飲むと、1杯以下の人に比べ、死亡率が男性で13%、女性で17%低くなる。特に心臓や脳血管、呼吸器系の病気になるリスクが13~45%低くなる。これは緑茶ポリフェノールのカテキンとカフェインの働き(2015年5月・国立がん研究センター)。
(2)認知症のリスクを下げる:石川県の住民723人を5年間追跡調査した結果、緑茶を毎日飲む人の認知症発症リスクは、ほとんど飲まない人に比べ、68%も低かった。これは緑茶のポリフェノールのロスマリン酸の働き(2016年6月・金沢大学)
(3)ダウン症の改善:ダウン症の患者84人に、緑茶のカテキンの1つ「エピガロカテキン・ガレート」を3か月~1年間飲ませる臨床試験を行なった。すると、緑茶成分をよく飲んだ人は、飲まなかった人に比べ、記憶力や言葉の連想力、適応行動などの項目で成績がよくなった。また、脳神経細胞の結合も増加した。これは、エピガロカテキン・ガレートが脳神経組織に直接届く強い抗酸化作用があるためで、ダウン症を薬で改善する可能性が開けた(2016年6月・スペイン・ゲノム制御センター)。
(4)インフルエンザの予防:エピガロカテキン・ガレートなどのカテキン類を細胞に加える実験で、マクロファージという免疫細胞が活発になり、インフルエンザウイルスなど体内に侵入した有害物質をモリモリ食べることを発見(2015年7月・国立農業・食品産業技術総合研究機構)。
(5)血液がんと難病の進行を止める:血液がんの1つ「多発性骨髄腫」と、筋組織が繊維状になる難病「アミロイド症」の患者の病原細胞を採取し、エピガロカテキン・ガレートを投与した。多発性骨髄腫の場合はがん細胞の増殖がストップ。アミロイド症の場合はナイロン状の繊維を作らなくなった。(2016年12月・米ワシントン大学)
(6)突然死を引き起こす「腹部大動脈瘤破裂」を予防:ラットをただの飲料水と、緑茶ポリフェノールを飲料水に混ぜて与える2つのグループに分け、2週間投与。その後、人工的に腹部に大動脈瘤を作り、4週間にわたって経過を観察。緑茶ポリフェノールを飲んだラットは、飲料水だけのラットに比べ、動脈瘤の増大が半分に抑えられた。また血管壁も分厚く丈夫になり、破裂しづらくなった。これは緑茶ポリフェノールに血圧を下げ、血流を促す働きがあるため。(2016年7月・京都大学)。