銃乱射事件が起きると銃器関連株が上がる
銃乱射事件が起きると、銃規制の声が高まる一方で、銃を求める人も増える。
一般の人の拳銃所持を禁止すべきではないという人の割合は、1959年には37%だったのに、2015年には76%と2倍になっている。銃犯罪が急増した1960年代と1970年代、そしてニューヨーク同時多発テロ事件を機に、一気に急増している。組織的なテロを個人が拳銃で防げはしないだろうが、不安がアメリカ人を銃購入へと駆り立てるようだ。
そして、銃乱射事件が起きると、銃器関連の株価が上昇する。銃規制が強化される可能性を考え、今のうちに銃器を買っておこうとする人が増えるからだ。
今回のラスベガスの乱射事件直後も、銃器関連の株価が上がった。が、これまでと比べ、上り幅はそれほど大きくはなかった。トランプ政権下では、銃規制の可能性は低いと人々は考えている。
これだけ乱射事件が続いても、なかなか銃規制が進まず、州によって違いはあっても、日本と比べれば、銃が野放しになっているように見えるアメリカ。
政府も警察も自分の身を守ってくれない。だから、自分で自分を守らなければ、誰が守ってくれるのか。そして、万が一の時には、国家権力に対しても、武力を使って戦うことになる。銃規制がなかなか進まない背景のひとつには、独立戦争の時代から引き継がれた、そんなアメリカ人のDNAがあるのかもしれない。
(敬称略。この項続く)(随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
岡田光世(おかだ みつよ) 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計35万部を超え、2016年12月にシリーズ第7弾となる「ニューヨークの魔法の約束」を出版した。著書はほかに「アメリカの 家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。