「肥満の妻をもつ男性は糖尿病リスクが3割以上高い」という、トホホな研究がまとまった。デンマークのオーフス大学の研究チームが2017年9月中旬に開かれた欧州糖尿病学会学術集会で発表した。
一方、夫が肥満であろうがなかろうが、妻の糖尿病の発症リスクにまったく関係がないという。いったい、どうなっているのか?
なぜか夫が肥満でも、妻の糖尿病リスクに関係なし
欧州糖尿病学会の9月11日付プレスリリースによると、研究チームは英国で実施されている「英国エイジング縦断調査」(ELSA)という健康調査に登録された50歳以上の約3500組のカップル(平均年齢60歳・男性3650人・女性3478人)を対象に、それぞれの配偶者の肥満度と糖尿病の発症リスクの関係を1998~2015年まで追跡調査した。
参加者の調査開始時点の肥満度を示す体格指数(BMI)の平均は27だった。標準体重はBMIが22前後で、25以上が過体重・肥満といわれるから、やや肥満気味の人が多かったわけだ。参加者は2年半ごとに血液検査を受け、生活習慣についてのアンケートに回答した。
約12年間の調査期間中に男性の14.5%、女性の9.9%が糖尿病と診断された。その結果、過体重・肥満の妻をもつ男性は、そうでない男性に比べ、糖尿病を発症するリスクが高いことが判明した。具体的には、BMIが30の妻をもつ男性は、BMIが25の妻をもつ男性に比べ、糖尿病を発症するリスクが33%も上昇した。
また、妻のBMIが5ポイント増加するごとに、その夫の糖尿病の発症リスクは21%ずつ上昇することもわかった。しかし、夫が過体重・肥満でも妻の糖尿病の発症リスクにはまったく影響しなかった。 夫のBMIが増加しても妻の発症リスクが増えるという傾向はなかった。つまり、妻の体重だけが一方的に夫の糖尿病に影響を与えていたわけだ。
妻が食事を作る家庭は、妻の肥満度が健康度に直結
これまで多くの糖尿病研究では、本人の生活習慣だけでなく、家族の関係も調べられている。しかし、片親が糖尿病だと発症リスクは約2倍に、両親とも糖尿病だと約5倍に高まり、遺伝的要因もあるなど、血のつながった家族の関係が中心だった。血がつながらない配偶者同士の関係の調査は今回が初めてだ。それにしてもこの結果は、どういうわけなのか。
研究を主導した同大公衆衛生学部のアダム・ハルマン博士はプレスリリースの中でこう語っている。
「配偶者の肥満が相手に与える影響が、男女間によって大きく違ってくるという研究は、私たちが初めてです。どうしてこういう結果になるのか、科学的な因果関係は説明できません。ただ、研究の参加者たちが、1990年代の終わりに全員50歳以上だったことを考慮する必要があります。その世代の人々は、現在よりも妻が食事を作る割合が高く、妻が家族全員の食生活に大きな影響を与えていました」
「妻が肥満であるということは、夫が糖尿病になりやすい不健康な食事をとっている可能性が高いということです。また、私たちの他の研究では、カップル同士は似た体形の相手を選ぶ傾向があることもわかっています。配偶者の体型を見ることによって、相手の糖尿病のリスクを予測し、適切な食生活指導を行なうことも必要になってくるでしょう。肥満の妻を持つ夫は、自分の肥満度をチェックするとともに、ぜひ糖尿病検査を受けるべきだと考えます」
現在でも奥さんに食事を作ってもらうことが多いアナタ、奥さんの体型の変化にも注意の目を向けた方がいいようだ。