自動車を横滑りさせて走る「ドリフト」のテクニックを競うモータースポーツ「インターコンチネンタル・ドリフティング・カップ(IDC)」が2017年9月30日~10月1日、東京・お台場の特設コースで開かれた。IDCは国際自動車連盟(FIA)公認のモータースポーツで、今回の日本が初開催だった。朝日新聞、日本経済新聞が10月3日の夕刊で報道するなど、熱烈なドリフトファンだけでなく、一般市民の関心を集めたようだ。
ドリフトは後輪駆動車のステアリングを大きく切り込んでアクセルを踏み込むと後輪が外側に流れ出すことで、これをうまくコントロールすればクルマを横向きにしながら走らせることができる。クルマをコントロールする面白さと派手な動きから、一部のマニアに人気がある一方、暴走族まがいとの見方も根強かった。
世界40か国以上で行われている
日経新聞は3日夕刊で、「情熱ドリフト お台場で競う」「日本が発祥、初の世界大会」の見出しとともに、IDCを写真入りで紹介した。1980年代からドリフトを始め、「ドリフトキング(ドリキン)」で知られる元レーサーの土屋圭市さんがドリフトについて「車でやるフィギュアスケート。いかにミスなく、車で浅田真央になれるかだ」とするコメントが載った。いかにも「ドリキン土屋」らしいコメントだ。
朝日新聞も同じ3日夕刊で「国際自動車連盟(FIA)が初めて公認したドリフトの大会に14か国・地域から24選手が参加し、日本の川畑真人が総合優勝を果たした」と、スポーツ面で詳報。FIAのジャン・トッド会長のインタビューを載せるなど破格の扱いだった。トッド会長は「ドリフトはまったく新しいカテゴリー。日本で大会を企画したのは、日本が発祥の地だからだ。あらゆる種類のモータースポーツを発展させていくことはとても重要だと思っている」と語った。
FIAによると、ドリフト競技は現在、世界40か国以上で行われている。IDCは「その各国のトップ選手が一同に集まって行われる世界一決定戦」という。FIAは交通安全とモータースポーツの普及に力を注いでおり、「広大なサーキットが不要で、広場と自動車があれば開催できるドリフト競技に着目している」という。
全国紙がモータースポーツとして取り上げる時代
ドリフトがクローズドコースのモータースポーツとして確立する前の1980~90年代、深夜の峠道でドリフト走行する若者は「ローリング族」などと呼ばれ、社会問題となった。トヨタの「ハチロク」こと、カローラレビン、スプリンタートレノはドリフトマシンの代表で、峠でドリフトする若者が主人公の人気漫画も登場した。
当時の新聞はローリング族を「暴走族の一種」などと表現しており、実際に峠道でドリフトして死亡する事故も相次いだ。それも今は昔。全国紙がドリフトをモータースポーツとして取り上げる時代になった。まさに隔世の感がある。
しかし、これも若者がクルマに興味を示さなくなり、ドリフトできる後輪駆動のスポーツカーが減ったせいだろうか。いずれにせよ、クルマでドリフトしたければ、深夜の峠道ではなく、富士スピードウェイはじめ全国の専用コースに行けば走れる時代になったことは喜ばしい。IDCの今後が注目される。