『金田一』本編も重版決定!
『金田一』の犯人たちは、悲しい過去から殺人に走った人物が多い。そんな犯人たちをネタにするなんて――と、船津さんたちは不安だったという。だがふたを開けてみればファンからも大好評で、「金田一ファンのふところ広い!」(船津さん)と驚くばかりだった。
船津 『金田一』という材料があって、それをどう調理するかという漫画なので、難しい部分も多いのですが、逆に原作の材料自体がめっちゃ「おいしい」こともあって、「調理する必要ないじゃん!」という感じでした。具体的に言うと、「悲報島殺人事件」のトイレの中ぶたとか(※編注:金田一が犯人の正体に気付くきっかけとなる、重要な場面)。普通の漫画じゃできない、裏ワザみたいな漫画ですよね。読者から「ずるいよ! 笑うよ!」という感想があったんですが、自分でもそう思います(笑)。「このマンガがズルい!2017」があれば確実に1位じゃないかと思いますね。
実は元々、船津さんはネーム(原作)としてのみ携わり、作画は別の作家に話を持ちかけていた。しかし、結局船津さんが自ら作画も手掛けることに。初期『金田一』を再現した画風、演出は、ファンからも人気が高い。
船津 もともと、そんなに絵に自信がある作家じゃないんです。なので、原作を見ながら頑張って似せようと描いています。特に1話目は探り探りだったので、一番大変でした。
――すごいのが、元ネタの話ごとに画風を合わせてることなんですよね。最初の『オペラ座館の殺人』(単行本1~2巻)と、『蝋人形城殺人事件』(16~17巻)だと、「本家」の作画もかなり違ってきますが。
船津 『蝋人形城』になると、輪郭もシュッとして、目もキラキラになってきますよね。その都度新しい漫画を描くぐらいの大変さがあって(笑)、毎週「うまく描けなかった......」と落ち込んでいます。でも、読者の方から、「初期のころを思い出して懐かしい」「うまい」と反響があって、すごく嬉しいです。
本作の連載をきっかけに、「本家」文庫版の重版が決定し、電子版の売れ行きも伸びているといい、これを機会にぜひ改めて、『金田一』の面白さを味わってほしいと船津さんらは語る。