雇用と金融政策
ただし、経済分野でも、安倍政権は及第点である。経済問題では、第1に雇用、第2に所得である。雇用の成果は歴代政権の中でも傑出している。これは、安倍首相が金融政策を雇用政策と喝破できた、希有な政治家であるからだ。
雇用と金融政策が結びつかないのは単なる無知であるが、日本では自称インテリ層にきわめて多い。海外ニュースはそのまま報道するから、金融政策と雇用がリンクしているが、国内ニュースを読むとリンクしていないことに、筆者は常に違和感をもっている。
消費増税だけを見れば、安倍政権はイマイチであるが、同時に財政再建を目指さないのは、不幸中の幸いである。筆者は、財務省関係者とよく話をするが、今回の消費増税話で財務省は喜んでいるでしょうというと、「安倍首相は財務省のいうことは半分しか聞かず、あとの半分は高橋さんの言うこと(を聞いている)」と半分落胆していた。たしかに、筆者は日本政府のバランスシートからみて、負債が大きくとも資産もあるので、財政再建の必要性に疑問を呈している(現代ビジネス、2015年12月28日)。
雇用がよく、大学生の就職率も民主党政権時とは比較にならないほど良い。これでは、若者の自民党支持が増えて当然だ。そうした流れが、選挙情勢の調査結果にも出ているのだろう。ただし、選挙はまだ始まったばかりで予断を許さない。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に
「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「日本を救う最強の経済論」(扶桑社)など。