近年注目を集めている人工知能(AI)に関して、興味深い研究論文が発表された。米グーグルや米アップルといった大手IT企業が開発したAIの知能指数(IQ)が、まだ「子どもレベル」というのだ。
だが、社会や産業で活用され始めているAIを見ると、「人間にとって代わるほどではない」と安穏としていられない気もする。ソフトバンクの孫正義会長兼社長は、「AIが人間の脳を抜く日」について発言をしていた。
2年前は6歳児の半分にも満たなかった
「AIのIQ」について調査研究したのは、中国科学院の3人の学者だ。論文は2017年9月29日付で米コーネル大のウェブサイトに掲載された。
対象となったのはグーグル、米マイクロソフト(MS)の「Bing」、アップルの「Siri」、中国バイドゥ(百度)ほか、中国の別のAIも含まれる。これらを18歳、12歳、6歳の人間のIQスコアと比較した。主な調査項目は「情報を取得する能力」、「情報を外部世界に提供する能力」、「知識に精通して蓄積する能力」、そして「知識を創造する能力」だ。調査を基に計算モデルをつくり、AIの能力を「算出」した。
実は2014年にも、結果を発表している。最もハイスコアだったのは18歳の人間でスコアは97、これに12歳の84.5、6歳児の55.5が続く。4番目にグーグルが入ったが、スコアは26.5で、6歳児の半分にも満たなかった。バイドゥは5位で23.5だった。
2016年の結果は、首位から3位までは順位、スコアとも2年前と同じ。そして4位もグーグルだったが、スコアは47.28で、6歳児にかなり近づいた。バイドゥは32.92で、MS「Bing」は31.98。最下位はアップルの「Siri」で23.94となった。
チップ1枚のトランジスタの数が300億超に
研究結果を見て、「2年間でグーグルのAIはIQスコアが倍以上に伸びた」とも、「AIは、まだ6歳の子どもにも及ばない」ともとれる。
それでも、AIが人間を凌駕する日がそう遠くない未来に来ると考える人はいる。例えばソフトバンクの孫正義会長兼社長は、かねてから、コンピューターのチップ1枚に組み込まれるトランジスタの数が2018年に300億個を超え、人間の脳細胞の数に追いつき、追い抜くと「予言」していた。例えば1年、2年の後に今回と同じようなIQテストをした場合、グーグルやMS、アップルのAIがどれほどのスコアをたたき出すだろうか。
米国の著名なAI研究者、レイ・カーツワイル氏は、AIのそれまでの進化により人間社会に大きな変革が訪れる「シンギュラリティ」(技術的特異点)が2045年に起きると予測している。未来はどうなるか分からないとしても、少なくとも現実世界では既に、AIが社会の中に徐々に浸透してきていることは確かだ。