東京株式市場は日経平均株価が、連日のように年初来高値を更新している。衆院選が公示された2017年10月10日に2万823円66銭を付け、さらに翌11日には2万898円41銭を付けて高値を更新した。
投開票日の10月22日に向けて、マーケットはすでに「選挙相場」に突入。メディアの当落予想などの情報で変動する相場に、一喜一憂する個人投資家は少なくない。
アベノミクス継続観測?
衆院選は、現在の自公連立による安倍政権の続投か、小池百合子・東京都知事が率いる希望の党と日本維新の会、さらに立憲民主党と日本共産党、社民党の3極が争う構図になった。
「小池新党」の立ち上げはサプライズだったが、ある証券アナリストは「小池新党VS自公の対決であれば、もしかしたらの期待もあったが、公認候補をめぐるゴタゴタや、首相指名は選挙後に決めるといった(小池氏の)煮え切らない態度を見せられては、期待も何もすっ飛んでしまった」と指摘する。
そもそも、今回の衆院選のポイントは、自公がどの程度、議席を維持できるかにあった。衆院の定数465議席に対して、過半数は233議席、安定多数は244議席。ある程度の議席が希望の党や立憲民主党に流れるのは避けられないだろうが、自公が80~90もの議席を失うようなサプライズは起らないとの見立てが、マーケットでは大勢を占めているようだ。
そうなると、現在の「アベノミクス」が維持され、株式市場にとっては悪くない。2018年9月には自民党の総裁選があり、ここで安倍首相が勝利をすれば、東京五輪・パラリンピックの開催後の21年9月までの長期政権が誕生する可能性もある。前出の証券アナリストは、「消費増税の問題で財政再建のゆくえが不透明にはなるが、アベノミクスによる経済対策や金融緩和の継続など、政策の一貫性は保たれる」ので、海外投資家の評価も上がるはずとみている。
東京株式市場は10月11日、日経平均株価が終値で前日比57円56銭高の2万881円27銭と7営業日続伸。じつに1996年12月以来、20年10か月ぶりの高値を付けた。東証株価指数(TOPIX)も1.67ポイント高の1696.81と3日続伸。ともに年初来高値を更新した。
メディアが安倍首相の衆院解散表明を報じる前の9月15日の株価は1万9909円50銭。その後、連日のように年初来高値を更新し、株価は半月ほどで971円77銭(4.9%)も急騰した。
好調な企業業績と円安が後押し
ところが、株価はさらに上昇する余地がある。すでに企業業績の上振れ期待などが株価高騰の背景にあるが、今回は選挙後に企業の中間決算の発表が本格化。堅調な業績が「証明」されれば、10~12月期にはさらなる株高が期待できる。節目とされる2万1000円までの上昇も可能かもしれない。
そんな株高を後押ししている、もう一つの要因が円安だ。衆院解散がメディアで報じられた9月18日には、ドル円相場が110円台後半から上昇しはじめ、翌19日には111円台後半まで上昇。その流れは10月に入っても止まらず、11日のドル円相場は1ドル112円半ば~後半で推移している。
過去の衆院選をみると、民主党政権から安倍政権へと交代した2012年12月の選挙の際には、投開票日以降の3か月間でドル円相場は1ドル84円台から95円台の円安に。また、14年11月の「アベノミクス解散」では、選挙が実施された14年12月14日からの3か月で、ドル円相場は1ドル118円台から121円台まで円安が進んでいる。
アベノミクスによる為替市場への影響はかなりに大きかったが、外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「安倍続投となれば、日銀の黒田総裁の続投の目が浮上することで、強い円安要因を連想させます」と指摘。さらに、たとえ政権交代が実現したとしても、円安の流れは変わらないとみている。
12月の米国の利上げや米トランプ大統領の減税政策への期待感の高まりもあって、神田氏は「ドル買いが進む」とし、12月までのレンジを113~116円と予測する。
円安が続けば、自動車や電機などの輸出関連株を中心に、企業業績の好転がさらに期待できる。