流通大手イオンの2017年8月中間連結決算(10月4日発表)は、営業利益が前年同期比17.5%増の850億円となり、11年ぶりに過去最高を更新した。金融や不動産、ドラッグストアという稼げる部門が堅調なところに、課題の総合スーパー(GMS)部門の損益が改善したためだ。ただ、本業でもあるGMS部門はなお営業赤字を解消できておらず、最高益を喜んでばかりもいられないのが実情だ。
中間決算で売上高(営業収益)は前年同期比1.4%増の4兆1686億円、経常利益は17.0%増の855億円でいずれも過去最高を更新した。純損益は42億円の黒字(前年同期は53億円の赤字)で2年ぶりに黒字に転じた。中間決算の発表と同時に2018年2月期通期の業績予想を上方修正。営業利益は従来予想から50億円上ぶれし、前期実績比8.3%増の2000億円を見込む。その通りになれば、6年ぶりに過去最高を更新する。上半期(3~8月)にGMS事業の赤字幅が縮小したことや金融や不動産が着実に利益をあげることを踏まえたものだ。
総合スーパー事業は赤字
業績が上向いていることに株式市場の反応は悪くないが、大歓迎というほどでもない。業績改善を手がかりに機関投資家らが17年10月5日にかけて買いを入れ、3営業日連続で株価(終値)は上昇したが、勢いが続かずに6日には反落し、終値は前日比23円(1.3%)安の1691.5円となった。個人投資家の間では売りが目立ったという。中間決算や通期見通しの上方修正を根拠とする買いにより、6月につけた年初来高値(1754円)を超えられるかどうかについては強弱見方が分かれる情勢だ。
分野ごとのイオンの中間決算の状況は、次のようになっている。問題のGMSは104億円の営業赤字。前年同期より99億円赤字幅が縮小したとはいえ、赤字部門には違いない。売上高は1兆5251億円で前年同期比0.2%減と横ばい。この部門には2015年9月と16年3月にイオンリテールがダイエーから運営を承継した33店舗も含む。売上高で全体の3割超ある代表的部門が赤字を脱せていない点は重い。
売上高でGMSをやや上回るのがSM(スーパーマーケット=食品スーパー)事業だ。その売上高は前年同期比0.6%増の1兆6228億円と横ばいだったが、営業利益は31.1%減の108億円。イオンリテールに運営を引き継がずに首都圏・京阪神地域に集中し食品への特化をはかるダイエーは、このSM事業に入る。赤字でないとはいえ、日銭を稼ぎやすい食品スーパーで大幅な減益となっている事実は投資家の判断にも影響しそうだ。
イオングループの構造改革をどう語るのか
イオンの主力事業はGMSとSMで、合わせて連結売上高の4分の3近くを占める。それなのに赤字と大幅減益。4月と8月にプライベートブランド「トップバリュ」商品を中心に値下げに踏みきり、顧客の支持を集めたものの、必ずしも利益には貢献していないわけだ。稼いでいる部門の金融、不動産、ドラッグストアがGMSとSMの停滞を補うのがイオンの収益構造だ。
稼ぐ部門を具体的に見ると、中間期の総合金融事業の営業利益は前年同期比3.6%増の329億円。不動産(ディベロッパー)事業の営業利益は13.1%増の235億円。ドラッグ・ファーマシー事業にいたっては売上高が9.5%増の3411億円、営業利益は29.1%増の138億円と絶好調と言っていい状態だ。
では課題のGMSとSMを今後、どうするのか。市場の関心はそこに向いていると言っていい。中間決算を発表する記者会見でイオンリテールの岡崎双一社長は「(今後も)値下げの計画はある」と強調したが、果たしてそれだけで起死回生できるのか。中間決算の記者会見に出てこなかったイオンの岡田元也社長は、11月に予定する中長期の経営計画を発表する記者会見には出席するとみられる。そこでイオングループの構造改革をどう語るのか、株価にとってもそれが焦点になりそうだ。