「小池さんに心から感謝したい」「野党批判の選挙はしない」。自民党の小泉進次郎氏(36)が衆院選公示日の2017年10月10日、いきなり小池百合子・希望の党代表(65)に「皮肉」たっぷりの演説を展開した。それも小池氏の「お膝元」である東京・豊島区のJR池袋駅前で、だった。
この2時間前には、同じ池袋駅前で小池氏も第一声をあげていた。小池氏は「安倍一強政治を終わらせよう。お友達だ、忖度だ、友達ならいいことがある、そんな政治を信頼できるか」と政府・自民党を真正面から批判。両党の「選挙の顔」ともいえる両者、互いの党を強く意識する内容だったが、そのトーンは異なっていた。
小池氏「そんな『ショボい』話じゃ日本は間に合わない」
池袋を含む東京10区で立候補するのは、小池氏の側近として希望の党を支える若狭勝氏。10日朝の駅西口、若狭氏の演説に小池氏が登場すると、人だかりと歓声が一際大きくなった。
小池氏は政府・自民党への批判を展開。まず消費増税について
「8%を10%に上げる、その使い道を変えるために総選挙をすると言っていたが、そんな『ショボい』話じゃ日本は間に合わない」
と挑発。教育・子育て財源に消費増税分のうちの約1兆円をあてることを検討する政府に、「国家予算は100兆円規模。その1%について必要かどうか見直し、ワイズ・スペンディングに変えれば1兆円は出てくる。これは東京都で立証済みだ」と、都知事としての実績もアピールした。
アベノミクスには「財政出動、アベノミクス第2の矢。これだけやってその効果たるや。ちょいとGDPを上げたからといって『大きな顔をするな』と申し上げたい」とまたも挑発的な言葉を使用。さらに森友・加計学園問題にも触れ、「お友達だ、忖度だ、友達ならいいことがある、そんな政治を信頼できるか」とまくし立てた。
小池氏は国会議員時代からこの東京10区で地盤を築いてきた。遊説には小池氏のイメージカラーであるグリーンのスカーフや帽子を身に着け、応援する有権者も数多くみられた。
そんな「アウェー」感ある池袋で、小池氏の2時間後に演説したのが自民党の小泉氏。池袋駅東口で鈴木隼人氏の選挙カーにあがった。小泉氏は「私がなぜ小池さんのお膝元で全国遊説をスタートしたか。理由をお伝えしながら、鈴木隼人さんの応援にかえたい」と切り出すと、「私は希望の党を立ち上げた小池さんに心から感謝したい」と、落ち着いた物腰で語りはじめた。
小泉氏「小池さんに心からありがとうと言いたい」
「1つ目は、小池さんのおかげで自民党は野党時代を思い出す良い機会をもらった。緊張感を思い出させてくれた。国民からの批判の声、自民党に足りないところ、厳しく突きつけてもらうことで、8年前の私の初めての選挙、野党になった時に支えてくれた皆さんへの感謝と、自民党は野党時代を忘れてはいけないということを、小池さんは思い出させてくれた。そのことに、小池さんに心からありがとうと言いたい」
小泉氏は「希望の党」という党名にも言及した。
「『希望』という言葉が使われたおかげで、真の希望とは何かを考える機会を与えてくれた。真の希望とは若い力。40歳の鈴木隼人さんは東京10区の候補者で一番若い。私と同世代で、今まで国づくりを一緒にやってきた仲間だ。鈴木隼人さんが特に力を入れてきたことは、選挙権のない若い世代にどうやって政治参加してもらえるか。小池さん、ありがとう。真の希望とは何かを、改めて考えさせてくれた」
さらに、希望の党が選挙直前に結党されたのを念頭においたとみられる、こんな発言もあった。
「選挙目当てでいろいろやっても有権者はそれを見抜くということを改めて教えてくれた。ありがとう。私たちは2020年の東京五輪・パラリンピック後以降を見据えている。政治家は次の選挙でなく、次の時代を考えるものだ」
「正々堂々、野党批判を繰り広げる選挙はせず、自民党への厳しい目線と向き合いながら、選挙のことでなく、次の時代を考えて選挙を最後までやっていく」
小泉氏は徐々に熱を帯びながらも、終始皮肉を交えていた。小池氏への「ありがとう」の言葉が出ると、集まった支持者からは拍手が沸く場面もあった。