かつては「脳に悪影響を与える」などと攻撃されていたテレビゲームも、近年の研究で認知機能の改善や維持に効果がある可能性が示唆されている。
さらに、認知機能だけにとどまらない効果も期待できるかもしれない。
独ルール大学ボーフムのサブリナ・シェンク博士とボリス・スチャン博士らが行動神経科学分野の学術誌「Behavioural Brain Research」2017年9月29日号で発表した研究では、ゲーマー(重度のゲームプレイヤー)は学習能力や獲得した知識を元に次の行動へと活かす柔軟性においても優れている可能性があるというのだ。
カードの組み合わせが示す天気を当てる
ゲーム研究の分野ではしばしば認知機能に与える影響が検証されているが、それ以外の効果や具体的に脳のどのような神経回路に作用しているのかは不明点が多い。
シェンク博士らは新たな知見を得るため、知識の取得や分類、活用の仕方といった、いわゆる「学習」にゲームが与える影響を調査することにした。
まず、1週間に15時間以上ゲームをするゲーマー17人と、日常的にゲームをする習慣のない人を募集。
両グループにはMRIによる脳の活性化観察に加え、1990年代に開発された「天気予報タスク」と言われるテストを受けてもらった。これは学習や脳の柔軟性、不確実な事象の予測といった能力を評価するためのテストで、記号が描かれたカードの組み合わせが示す天気を推測するというもの。
例えば市松模様のカードは「雨の確率が20%」を意味し、水玉模様のカードは「晴れの確率が80%」を意味するとしよう。すると、市松模様と水玉模様の組み合わせが示す天気予報は「晴れ」となる。
こうした雨や晴れの確率が異なる記号カードを16枚用意し、3パターンだけ記号の組み合わせが示す天気を提示。以降はランダムに2~3枚の組み合わせを見せ、その天気を当てるというテストを34人の被験者が受けた。
テストの特性上、回数を重ねるほどそれぞれのカードが示す確率は推測しやすくなり天気予報の正解率は向上するが、ゲーマーグループの正解率は非ゲーマーグループに比べ有意に高く、完全にカードが示す天気の確率を把握した被験者までいたという。
テスト後に「どのカードがどの天気の確率を示していたか」というアンケートを実施すると、ゲーマーは16枚中平均12枚を当てていたのに対し、非ゲーマーは平均8枚にとどまっている。