降り注ぐ隕石が生命の材料
ただし、池説に欠点がないわけでもない。DNAはもちろんのことRNAも非常に複雑な存在であり、ちょっとやそっとのヌクレオチドがある程度ではとても生み出せないという問題がある。
海であればその広さから多数のヌクレオチドが存在していてもおかしくないが、池では絶対量が限定されてしまう。わずかな量のヌクレオチドからRNAが奇跡的に生み出される可能性は非常に低い。
だが、セメノフ博士はその問題も克服できると指摘している。
「原始の地球では今よりもずっと隕石が一般的でした。日々大量の隕石が地表に存在する無数の池に降り注ぎ、生命の源を運び込んでいたと考えられます。ある池でついにRNAが誕生する可能性は十分にあるのです」
今のところは理論をまとめたにすぎないが、博士らは早ければ来年にも今回の理論に基づいた実験を行い、「暖かい池」からRNAが生み出せるのかを確認する予定だ。