味も香りも優雅な秋の味覚「マツタケ」――。アカマツが広く群生する全国有数の産地、岩手県岩泉町の「岩泉まつたけ」が収穫不足に見舞われている。
マツタケの生育は天候に左右されやすい。収穫不足は、2017年夏の長雨とそれによる日照不足が影響したとみられる。
「岩泉まつたけ」、2016年は台風10号で大きな被害
岩手県岩泉町で、マツタケが深刻な不作に陥っている。
岩泉町では例年9~10月に、約5トンのマツタケが採れる全国有数の産地で、収穫期が本州で最も早く、東京などを中心に全国に向けて出荷している。 2015年には10トン余りが収穫されたものの、16年8月末には岩手県大船渡市付近に上陸するという、極めて珍しい進路をとった台風10号の影響で、「岩泉まつたけ」は大きな被害を受けた。
2017年はそれを挽回しようと、3月には岩泉まつたけ事業協同組合が「岩泉まつたけ」を商標登録の出願、登録。「岩泉まつたけ」ブランドとして大々的に売り出そうと期待。同組合はホームページで、8月24日に商標登録したことを発表。9月20日には、新たに「岩泉まつたけオンラインショップ」をオープンした。
その矢先のこと。5日後の25日には、オンラインショップでの「注文受付の一時休止」を発表。全国各地から注文の希望が寄せられているが、オンラインショップの再開見通しは立っていないようだ。
10月8日に開かれた「龍泉洞秋まつり」で振る舞われるはずだったマツタケ料理も、マツタケご飯の弁当に「制限」。岩泉町は「マツタケの収穫は微妙な天候状況で大きく変わりますから」と落胆した様子で、「マツタケ農家さんの話では、今年は夏場の長雨にたたられたことと、それに伴い低温が続いたことが響いたようです」と説明する。
岩泉町にとって、マツタケは重要な産業の一つ。台風被害と長雨の影響で、2年連続で不作に見舞われていることで、復興を目指す地域経済の回復の遅れも心配される。
最近5年でも高値圏
一方、マツタケ不作の影響は、東京都中央卸売市場(大田市場)の価格にも跳ね返っている。2017年8月のマツタケの平均卸価格は、1キログラム当たり7491円。前月からは18%ほど値下がりしたが、前年同月と比べると35.8%上昇している。最近5年と比べても、8月としては最高値だった。
さらに、10月第1週(9月29日~10月5日)の入荷状況をみると、前週と比べて4%減、前年同期比で31%も減っている。競りでの価格(国内産)は、高値で400グラムあたり10万8000円を付けている。前年同期の価格は3万7800円で、実に3倍近くに値上がりしたことになる。
インターネットの掲示板などには、
「まつたけ食べたいヤツはインスタントお吸い物使った炊き込みごはんでガマンだなwww」
「昔はまつたけなんて山ほどとれたけど、どこの地域もだんだんとれなくなってきたな。取り尽くして資源管理ができないだけなのか、盗む奴のせいのか、自然環境の変化のせいなのか。どれが原因なんだ?」
「お天気ばかりはどうにもならんのね」
「エリンギみたいにはつくれんのかねw」
などといった声が。「秋の味覚」だけに、なんとか口にしたいようすがうかがえる。
とはいえ、それでなくても国産マツタケは年々収穫を減らし、ここ数年は中国産やカナダ産などが幅を利かせている。不作で価格上昇となると、この秋は庶民の口には入りそうにないかもしれない。