金融庁は、ビットコインなどの仮想通貨の取引所など11社を「仮想通貨交換業者」として初めて登録した。2017年9月29日、発表した。4月の改正資金決済法施行により、取引所が登録制になったことを受けた措置で、第1弾の登録となる。利用者保護に向けて一歩を踏み出した形だが、新しいサービスや技術が次々に登場する中でのルール整備には、課題が山積している。
「顧客に安心感を持ってもらえる」。9月29日の登録業者発表後、記者会見した国内最大の仮想通貨取引所「ビットフライヤー」の加納裕三・代表取締役は、登録の意義をこう強調した。
廃業を選択した業者も12社
金融庁は、2014年に取引所「マウントゴックス」で巨額のコインが消失する事件が発生したことなどをきっかけに、取引業者に対する規制の検討に着手。利用者保護や資金洗浄(マネーロンダリング)対策を目的に、改正資金決済法が成立した。
同法は、取引業者に金融庁への登録を義務づけるほか、1000万円以上の資本金や、顧客から預かった資金と自社の財産を分けて管理することなどを課す。監査法人による年1回以上の監査も受けなければならないうえ、金融庁が登録業者に定期的に立ち入り検査を行い、適切な運営が行われているかをチェックする。
4月の改正法施行を受け、既に取引業務を行っていた業者などが金融庁に登録を申請し、審査を受けていた。その結果、ビットフライヤーなど11社(新規参入2社を含む)が登録された一方、登録に必要な条件を満たせないと判断し、廃業を選択した業者も12社に上った。
規制と新産業育成のバランスをどう取っていくのか
一定の基準で取引業者がふるいにかけられ、金融庁が取引所の運営状況に目を光らせる体制が整ったといえるが、課題は依然多い。仮想通貨の技術は進歩がめざましく、激しい変化に法改正が追いつかない可能性が高い。法規制だけでは限界があるのが実情で、投資家保護や透明な運営に向けた業界の自主的な取り組み強化も重要になりそうだ。
続々と登場する仮想通貨の新サービスへの対応も今後の課題だ。とりわけ、問題になっているのが「ICO(イニシャル・コイン・オファリング)」だ。近年、先進的なベンチャー企業や学術研究、あるいはNPOなど社会事業への出資などを、インターネットを通じて公募し、不特定多数の人間から必要資金を集める「クラウド・ファンディング」がすっかり普及したが、仮想通貨で同様のことをするのがICO。迅速な資金調達ができるとあって拡大の兆しを見せている一方、詐欺とみられる事案も出始めている。中国に続き、韓国もICOの全面禁止を打ち出しており、日本も対応を迫られる可能性がある。
今回の規制導入によって投資家には仮想通貨への安心感が生まれ、市場の発展が期待できるだろう。半面、当局による規制が過剰になれば、新技術や新サービスの創出を妨げる恐れもある。規制と新産業育成のバランスをどう取っていくのか、金融庁が難しいかじ取りを迫られる場面も出てきそうだ。