規制と新産業育成のバランスをどう取っていくのか
一定の基準で取引業者がふるいにかけられ、金融庁が取引所の運営状況に目を光らせる体制が整ったといえるが、課題は依然多い。仮想通貨の技術は進歩がめざましく、激しい変化に法改正が追いつかない可能性が高い。法規制だけでは限界があるのが実情で、投資家保護や透明な運営に向けた業界の自主的な取り組み強化も重要になりそうだ。
続々と登場する仮想通貨の新サービスへの対応も今後の課題だ。とりわけ、問題になっているのが「ICO(イニシャル・コイン・オファリング)」だ。近年、先進的なベンチャー企業や学術研究、あるいはNPOなど社会事業への出資などを、インターネットを通じて公募し、不特定多数の人間から必要資金を集める「クラウド・ファンディング」がすっかり普及したが、仮想通貨で同様のことをするのがICO。迅速な資金調達ができるとあって拡大の兆しを見せている一方、詐欺とみられる事案も出始めている。中国に続き、韓国もICOの全面禁止を打ち出しており、日本も対応を迫られる可能性がある。
今回の規制導入によって投資家には仮想通貨への安心感が生まれ、市場の発展が期待できるだろう。半面、当局による規制が過剰になれば、新技術や新サービスの創出を妨げる恐れもある。規制と新産業育成のバランスをどう取っていくのか、金融庁が難しいかじ取りを迫られる場面も出てきそうだ。