回転寿司チェーン最大手「あきんどスシロー」を展開するスシローグローバルホールディングス(HD)と5位の元気寿司が経営統合に動き始めた。2017年9月29日、協議開始を発表したもので、実現すれば、くら寿司を展開する現在業界2位のくらコーポレーションを大きく引き離し、独走態勢に入る。裏で動いたのが、元気寿司の親会社でコメ卸最大手の神明(神戸市)。規模だけでなく、味でも他社を引き離したい考えだ。
神明は英投資ファンド、ペルミラが保有するスシローグローバルHD株約32.7%分を約380億円で取得。スシローグローバルHD傘下にあきんどスシローと元気寿司をぶら下げる形を軸に検討する。統合時期などは今後検討する。
「元気カッパ連合」は1年足らずで頓挫
青写真を描いたのは、神明の藤尾益雄社長だ。1950年、「神戸精米」としてスタートした神明。コメの卸売りを中心としながらも、外食や無菌パック米飯の製造・販売、0.5合を10分で炊ける炊飯器の開発・販売など、事業を広げてきた。
藤尾氏の悲願が、日本食の代表格である寿司店の展開だ。神明は2012年、元気寿司と資本業務提携契約を締結。元気寿司の株式の28%を握り、筆頭株主となった。以降、「うまいコメ」にこだわり、「回転しない寿司」を積極的に展開。翌年、元気寿司はかっぱ寿司を展開するカッパ・クリエイトと、将来の経営統合を視野に業務提携契約を締結し、藤尾氏はカッパの社長も兼務した。
だが「元気カッパ連合」は1年足らずで頓挫する。藤尾氏は「元気スシロー連合」の記者会見で、過去に経営統合がうまくいかなかったことに触れ、「企業体質があまりにも違い過ぎた。かっぱ寿司は経営効率が優先されており、考え方の違いから統合は断念した」と振り返った。2015年に神明は元気を子会社化し、「再編相手」を探していた。
一方のスシローは2009年にMBO(経営陣が参加する企業買収)により上場廃止。外資系ファンドの下で経営改革を進め、売上高日本一を達成した。2017年に再上場を果たし、筆頭株主のペルミラは株を手放すタイミングを探っていた。
重複する部分は少ない
現在の経営環境は、王者スシローといえども安泰とはいえない。人手不足による人件費の上昇に加え、魚価格の高騰も重荷だ。
スシローの店舗は西日本を中心に約450店舗。海外店舗は10に満たない。一方で元気寿司は栃木など北関東が中心。しかも海外では国内より多い150店舗以上を展開する。重複する部分は少ない。経営統合すれば調達面などでスケールメリットを生かせるほか、海外展開のノウハウも共有できる。原価率が高く、味に定評があるスシローは、藤尾氏にとって絶好の再編相手だった。
スシローの売上高は1477億円で、5位の元気349億円と合わせると、1800億円規模になる。2位のくら寿司の1136億円を軽く凌駕し、以下、ゼンショーHD傘下のはま寿司1090億円、かっぱ寿司794億円なども圧倒することになる。規模に加え、中身でもリードできるか。藤尾氏の挑戦は続く。