あらゆる病気の陰に腎臓の不調が隠れている?
複雑な仕組みで全身を管理している腎臓だが、いま世界の医学界で「急性腎障害」(AKI)という言葉がインパクトを持つようになってきた。よく新聞の死亡欄で死因に「多臓器不全」という病名を聞く。多くの臓器が働かなくなって死に至る病気だが、そのほとんどが臓器ネットワークの要である腎臓の不調から起こることがわかった。また、多くの病気が腎臓の異変が原因で起こるこることも判明し、現在、先進国の入院患者の5人に1人が急性腎障害を起こしている。
番組は、腎臓以外の病気でも腎臓をターゲットにした治療を行なっているドイツ・ライプチヒ心臓センターを訪ねた。どんな薬を飲んでも高血圧が改善しないユルゲン・ミッデンドルフさんに対し、心臓専門医のフィリップ・ルーツさんは、なんと腎臓の手術を行なった。細いカテーテルを腎臓の血管に挿入し、神経の一部を焼き切った。血圧を監視してコントロールするのも腎臓の仕事で、血圧を上げる時は「レニン」というメッセージ物質を血管に出している。最近、腎臓が不調になるとレニンの出し過ぎで高血圧になることが判明し、手術で正常化すれば下げられることがわかった。
手術を受けたミッデンドルフさんは血圧が正常に戻り、外出を楽しめるようになった。この病院では、治療薬をストップしただけで、弱った心臓が回復した患者もいる。薬が弱った腎臓をさらに悪化させ、心臓に悪影響を与えていたからだ。治療チームに腎臓の専門医を参加させ、まず、心臓より腎臓を回復させる治療法をとったのだ。ルーツ医師はこう語った。
「腎臓は、あらゆる臓器と語り合いながら重要な仕事をしています。私たち医療者はやっと最近、そのことに気づきました。急性腎障害は世界中の医療現場で問題になっています。少し治療を変えるだけで、助かる可能性がある患者が毎年大量になくなっています。私たちの病院では、常に腎臓を意識することが多くの命を救うことにつながるという考えで、様々な病気の治療を進めています」
番組の最後で山中教授と、もう1人のキャスターのタモリさんが話し合った。
山中教授が「腎臓のためには、よぶんな薬は飲まないほうがよいこともあります」
タモリさん「よく胃に優しいというが、腎臓に優しいは聞いたことがないね」
山中教授「胃は痛いと悲鳴を上げますが、腎臓は我慢してなかなか声をあげません。大事なことをよく『肝心』と書きますが、昔は『肝腎』と書いていたのです。それほど腎臓はカラダの中心になる大事な臓器です」