宮沢賢治「雨ニモマケズ」のような頼もしい臓器
何やら宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の「東ニ病気ノコドモアレバ 行ッテ看病シテヤリ 西ニツカレタ母アレバ 行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ...」を思わせる働き者の臓器だ。
どういう仕組みで腎臓が司令塔の役目を果たしているのか。山中教授はこう説明した。
「心臓が送り出す血液の4分の1は腎臓へと送り込まれます。腎臓は血液中の塩分やカルシウム、マグネシウムやカリウムなどの様々な栄養成分を調整して血液の管理者になっています。たとえば、カリウムが多いバナナは健康に良い果物といわれます。カリウムは高血圧の予防やむくみの解消に大切な栄養素ですが、血液中のカリウムが多すぎると不整脈が起こります。その微妙な量をあちこちの臓器から情報を得て、腎臓が調節しているのです」
「腎臓が寿命を決めている」といわれるのはこうだ。動物には決まった寿命がある。ネズミは3年、ヒツジは30年、ゾウは70年。寿命と身体の大きさはほぼ比例するが、例外の動物がいる。コウモリ30年、人間75年だ。これには血液中の「リン」の量が影響している。寿命が短い動物ほどリンの量が多い。リンが老化を加速させるからだ。リンが増えると血管の石灰化が起こり、全身の血管が固くなることが一因とされる。
では、リンなど摂らなければいいではないかというと、そうはいかない。リンはカルシウムやマグネシウムと結合して骨や歯になる。脂肪を燃焼してエネルギーを生み出し、カラダの活動に欠かせない。欠乏すると心筋梗塞を起こし命に関わる。多すぎても少なすぎても命に関わる、非常に厄介だが、必須の栄養素だ。骨がリンの貯蔵庫になっており、その量を監視する大事な役目を担っているのが腎臓だ。
山中教授「腎臓は、骨からの『リンが足りているよ~』『リンが少なくなったよ~』というメッセージをいつも聞いて、そのつどリンを骨に送ったり、リンを回収して尿として排泄したり調節しています。腎臓はあらゆる臓器と会話しながら、自分の仕事を行なっています。だから、腎臓が不調になると寿命に関わってくるのです」