ほぼ40年前の1978年、中国の経済を担当していた谷牧国務院副総理は初めてチームを率いて西欧5カ国の企業を視察した際、高度に現代化され、グローバル経営を行う巨大企業に震え上がった。
中国の企業が今日のように巨大となり、外国人を恐れさせるようになるとは、そのとき中国人は誰一人として考えていなかったに違いない。そして、その大半が国有企業だ。
国有企業はどれほど大きいのか
中国の国有企業がどれほどの大きさを持つのか。ここ1カ月ほどのニュースで見てみよう。
中国聯通(チャイナ・ユニコム)で進められている国有企業に民間企業が出資する「混合所有制」改革では、募集資金は780億元(約1兆3,227億円)にのぼる。大手ネット系企業のバイドゥ(百度)やアリババ、テンセント(騰訊)のほか、JD(京東=物流企業)などが参与しており、私募債発行の割合は資本金総額の42.63%に達して国の上限規定をはるかに上回り、中国証券監督管理委員会が特別許可を与えたほどである。
中国鉄路総公司はそれを見て、「そんなに良いものなら、われわれも混合所有制改革をしよう」ということになり、アリババ、テンセントと順豊(物流企業)に出資を要請した。昨年末までのこの企業の負債は4兆7200億元(約80兆円)であり、全国GDPの6.3%に相当している。
世界トップ500企業の2社である神華集団と中国国電集団が合併し、資産総額は合計1兆8000億元(30兆円あまり)、合併後は世界最大の発電企業となった。
いくつあるのか不明
『人民日報・海外版』の微信(WeChat)オフィシャルカウント『侠客島』で17年9月18日に発表された「国有企業改革、突然鳴り物入りに?」という文章には、「2018年は国有企業改革が相次ぐ年となるだろう」と書かれている。
だが、いったい「国有企業」とはどんなシロモノなのか。そもそも「国有企業」とは誰のことなのか。こうした問いかけに、きちんと答えられる人はほとんどいない。
まず、国には国有企業をリストアップした文書はなく、それぞれの企業サイトでもはっきりとは説明されてはいない。また、国家の投資あるいは持株50%という基準で区分することはできない。そして、歴史的な理由から、数知れぬ合併・分割・再建・新規設立・移転・所有制改革を繰り返しているため、実態がわかりにくくなっている。
それでも、あれこれと調べまくった挙句、「資産が政府の監督管理を受けるかどうか」「責任者が党の組織によって任免されるか」という、二つの基準だけはあった。当然、この「政府」には中央と地方という違いがあり、国有企業もそれによって中央企業と地方国有企業に分けることができる。
地方国有企業はあまりにも多く複雑で、2013年時点で10万4000社あったが、現在では、その数が全く分からない。
この基準に合致する中央企業は、おおきく二つに分類できる。
中央の国営企業は2分類
ひとつが国有資産管理監督委員会(日本の省クラスに相当)の管理監督を受けるもので、現在98社ある。その分野は軍事工業・宇宙・船舶・エネルギー・通信・機械製造・鉄鋼と非鉄金属・食糧・交通・建築など多岐にわたる。このうちの50社のトップは中央政治局常務委員会が決定し、その地位は副部級(日本の副大臣に相当)の幹部と同等であり、このためにしばしば副部級企業と呼ばれる。
もうひとつが、財政部(日本の財務省に相当)、あるいは財政部に委託された滙金公司が出資者としての職責を履行し、「一行三会」(中央銀行の中国人民銀行、銀行業監督管理委員会、証券業監督管理委員会、保険業監督管理委員会)が業務指導と監督管理を行うもので、現在24社ある。銀行・保険・証券・資産管理などの業務を行う企業だ。このうち、15社のトップは中国共産党中央によって決定され、それは具体的には3大政策銀行、5大国有銀行、4大国有保険のほか、中国投資有限責任公司、中信集団、光大集団である。
テンセント、アリババもかなわない
上記以外にも、大量の部・委員会所属の企業があり、広義には中央企業と考えられるが、規模は大小さまざまだ。2013年に財政部がたった一度だけ公表した国有企業の「財産」によると、この種の中央企業は5万社余りある。
一方で、3大電信運営企業が合資した鉄塔公司は、実業類に分類されるものの、国有資産管理監督委員会の中央企業リストにはのっておらず、「中央企業の序列に未収録」と同委員会は説明している。
2017年のフォーチュン世界トップ500企業にランクインしている中国企業は115社である。その中には、48社の実業類中央企業があり、国家電網は世界第2位にランキングされている。
中国企業家協会の統計によれば、2017年中国企業トップ500のうち、274社が国有および国有持株企業だ。数としては全体の54.8%だが、営業所得比率で71.83%、資産比率で86.19%、純利潤比率で71.76%、納税比率で85.87%を占め、圧倒的な存在だ。
中国国営企業が国民経済の命脈を握っているといっても言い過ぎではない。最大の民間企業である華為(ファーウェイ)でも、中国企業トップ500の中ではようやく第17位にランキングしているに過ぎず、テンセント、アリババなどのネット業界のトップ企業でさえも、そのランキングははるかに下である。
まさに中国の「特色ある社会主義」の実態である。
(在北京ジャーナリスト 陳言)