贔屓のチームを応援するためにサッカーや野球をテレビで見る、というのは誰もが日常的に行っていることだろう。
そんな「スポーツ観戦」から受けるストレスが心臓への負担となり、心血管疾患(心臓や血管に関する病気)のリスクを上昇させているという研究結果が2017年10月4日、カナダのモントリオール大学の研究者らによって発表された。
誰が見てもスポーツ観戦で心拍数上昇
スポーツ観戦が心臓の負担となっていることが指摘されるのは、今回が初めてではない。以前から多数の報告が存在しており、2000年に発表されたオランダの研究では、フランス対オランダのサッカー代表戦が放送された日に中高年男性の心血管疾患による死亡率が50%増加した、とある。
ドイツや英国での研究でも、ワールドカップや代表戦を放送した日は心臓発作などで病院に緊急搬送される患者数が2~3倍になることが報告されている。
とはいえ、これらの研究はあくまでも現象の観察で、本当にスポーツ観戦で心臓に何らかの影響が出たのかはわからない。そこでモントリオール大学のポール・カイリー博士らは、実際にスポーツを観戦している人の心臓を詳細にモニターすることにした。
まず、地元モントリオールのプロホッケーチーム「モントリオール・カナディアンズ」のサポーターを募集し、これまでに心血管疾患の既往歴がない健康な23~63歳までの男女20人を用意。
簡単なアンケートで生活習慣や身長、体重など心臓に影響を与えそうな要因を把握した。さらに「ファン・パッション・スコア」というテストで応援しているチームへの情熱を評価、つまりファンとしての熱心さも調べている。
その上で、一定の期間中にモントリオール・カナディアンズの異なる複数の試合をテレビで見てもらい、その間の心拍数や脈動の変化を詳しく調査。心療内科で用いられるスコアシートを用い、ストレス指数や興奮度も分析したという。
すると、年齢や性別に関係なく被験者らは観戦中の心拍数が平常時よりも平均75%増加し、延長中や得点・失点時など大きな変化があったときには110%も増加していた。
この数値は強度の高い長距離マラソンなどを行ったときと同等の負荷が心臓にかかっていることを示している。
カイリー博士らは「試合の重要な局面や熱心なファンでは心拍数が上昇しているのではないか」と推測していたが、実際には観戦中、心拍数は常に増加しており、ファンとしての熱心さも関係していなかった。誰が見ても心臓に負荷がかかっていたのだ。