人工知能(AI)を搭載し、話しかけて操作するAIスピーカー。日本国内では2017年10月に入って、米グーグルとLINEが製品を発売した。米アマゾンやソニーも年内の参入を明らかにしている。
10月5日にAIスピーカー「Clova WAVE(クローバウェーブ)」を発売したLINEの最高戦略マーケティング責任者(CSMO)、舛田淳氏は「AIを実装するデバイスは、将来スマートフォン(スマホ)の普及台数を超える」と予測する。AIスピーカーは、その第一歩となるのか。
LINE製品は通信アプリとの連動が特徴
LINEが発表したClova WAVEは、同社が開発したAI「Clova」を搭載し、声で操作する。音楽は「LINEミュージック」から、「今のヒットチャートをかけて」といった要望に応じて曲が流れる。赤外線対応のテレビや照明、エアコンといった家電とも連動し、リモコンとして機能する。「電気をつけて」「チャンネルを変えて」と呼びかけて、コントロールできる。
舛田氏は、「毎日の生活に役立つ情報を、Clova WAVEから提供したい」と話す。そのひとつが、ニュースだ。「ニュースを教えて」と話しかけると、「LINEニュース」から最新記事が5本、音声で読み上げられる。経済やスポーツといったカテゴリーを指示すれば、そこから記事が選ばれる。天気や占い、時計・アラーム、カレンダー、スケジューラーもあり、これらに基づいて毎朝その日の予定として読み上げてくれるブリーフィング機能も付いている。
Clova WAVEの特徴は、通信アプリ「LINE」との連携だ。ただ、居間で家族と共有するスピーカーから、自分のLINEのあらゆるメッセージが読み上げられたら、夫婦間や子どもでも気になるだろう。そこで今回、舛田氏が「最も重要」としたのが、Clova WAVEで使う「LINE家族アカウント」。個人のアカウントのプライバシーを守りつつ、家族をメンバーとする専用アカウントを別途設けるのだ。そのうえでClova WAVEに、例えば「ママにLINEを送って」と話しかけ、「ケチャップはどこ」と声で操作すると、メッセージが相手のスマホアプリにある家族アカウントに送られる。相手から返信が来ると、Clova WAVEが読み上げる仕組みだ。
グーグルは質問に答えるやり取りに強み
LINEの発表の数時間前、グーグルもAIスピーカー「グーグルホーム」を発表した。インターネット上の自分のグーグルアカウントと連動し、「OKグーグル」と発声して起動させて家電を操作したり音楽を聞いたり、ニュースを読み上げたりする。こうした基本的な機能は、Clova WAVEと同じといってよさそうだ。
独自開発の対話型AI「グーグルアシスタント」は、スマホの基本ソフト(OS)「アンドロイド」にも搭載されている。「ネットの巨人」であるグーグルだけに、声での質疑応答のようなやり取りは一日の長があるだろう。この点、グーグル製品開発本部長の徳生裕人氏は10月5日放送の「ワールドビジネスサテライト(WBS)」(テレビ東京)で、「検索をやっている会社なので、質問に答えるのは、これまでやってきた蓄積が生きるエリアだと思う」と話した。
一方のLINE。舛田氏は「日本の住環境、日本のユーザーの状況を最適にとらえていきたい」と話す。Clova WAVEは17年8月から「先行体験版」を一部ユーザーに提供しており、利用者からの声を集めて改良を重ね、今回発表した「正規版」につなげた。
同じ日に製品発表という「日米対決」になったLINEとグーグル。発売日は1日だけLINEが早かったが、価格はいずれも1万4000円(税込)。ただしClova WAVEは、2018年1月31日までのキャンペーンとして、LINEミュージック12か月分とセットで1万2800円となる。販路はいずれも自社のオンラインサイトやECサイトのほか、グーグルホームは発売時から家電量販店の店頭でも取り扱う。「量販店では10月末から11月頭」というLINEより先んじた格好だ。
今後国内では、ほかのメーカーも参入する。米国のAIスピーカー市場をリードする米アマゾン・ドット・コムは、独自AI「アレクサ」を搭載した「アマゾン・エコー」の年内発売を10月2日に明らかにした。具体的な価格や発売時期は不明だが、米市場での実績が強みだ。またソニーも、年内に「グーグルアシスタント」搭載のAIスピーカーを国内で販売開始すると、ソニー広報が10月6日、J-CASTニュースの取材に答えた。
「スマホが出た時も『ガラケーがある』と言われた」
秋から冬にかけての商戦は、AIスピーカーのメーカーが火花を散らすことになりそうだが、肝心の消費者はどう受け止めるか。前出のグーグルの徳生氏はWBSの番組内で、「これ(AIスピーカー)も新しいコンピューターとのかかわり方。大きく何かが変わる可能性があるんじゃないかと思う」と話した。
LINEの舛田氏は、会見で普及のハードルを問われると、「スマホが出た時も『日本にはガラケーがあるからいいんだ』という人が大半だったと思う」と指摘。だがその後、スマホは爆発的に普及した。また、かつて一部でしか利用されていなかったネット通話やチャットを、LINEは「7000万人まで普及させた実績がある」と強調。AIスピーカーも「一般家庭にどう入っていくか、だけを考えて」施策をうっていくと語った。