2012年以降「受賞逃す」が完全に定着
とはいえ、2000年代後半~10年代初頭は「受賞逃す」報道は散発的にみられる程度で、「恒例行事」とはなっていなかった。
定着したのは2012年ごろからだ。この年、英国のブックメーカーが村上さんを「一番人気」に推したことが影響したとみられ、以後は、
「ノーベル文学賞に莫言氏 中国人作家 村上春樹氏 受賞逃す」(産経、2012年10月12日付朝刊)
「文学賞にマンローさん ノーベル賞 村上春樹氏は逃す」(産経、13年10月11日付朝刊)
「ノーベル賞:ファンまたため息 村上さん、文学賞逃す」(毎日、14年10月10日付朝刊)
「ハルキストまた涙」(ニッカン、15年10月9日付)
「ディランさん文学賞 村上春樹さんの同級生らため息『いつか受賞を』」(読売、16年10月14日付朝刊)
といった具合だ。13年には産経新聞が電子版で「受賞」と号外を出す珍事も起こった。見出しにもあるように、「ハルキスト」と呼ばれるファンたちや、ゆかりの場所に集まった同級生などの落胆の声、「なぜ受賞できないのか」といった分析が定番メニューだ。ちなみにJ-CASTニュースも12年以降、16年まで「受賞逃す」を5年連続で伝えている。
なお、選考を行うスウェーデンアカデミーは、選考の過程について秘密主義を守っており、公表は50年後だ。村上さんが実際に「有力候補」なのかどうかは定かでない。