生徒による男性教師への暴行事件が起きた私立博多高校(福岡市)が発表した謝罪文に、他校が過去に制作した文書からの「剽窃疑惑」が持ち上がっている。
インターネット上に、両校の文書で使われている語句や文章の構成が「驚くほど酷似している」との指摘が相次いでいるのだ。いったい、2つの文書はどれほど似ているのか。J-CASTニュース編集部が確認すると......。
浦和学院の謝罪文と「酷似」
博多高校は2017年10月2日、校長名義の謝罪文を公式サイト上に掲載した。文書は「生徒による問題行動と今後の対応について」と題したもので、9月28日に起きた同校生徒による新任男性教師への暴行事件をお詫びする内容となっている。
この謝罪文と「酷似している」として注目を集めているのは、浦和学院高校(さいたま市)が15年11月30日に発表した文書だ。
これは、浦和学院の生徒がJリーグの外国人選手に対する差別的なツイートを投稿したことを受けて、同校が公式サイト上に掲載したもの。タイトルは「SNS上における投稿について」だ。
はたして、両校の謝罪文はどれほど似ているのか。
まず、文章の構成はどちらも同じだ。1段目で事態の概要を説明し、2段目で関係者に謝罪。3段目に騒動を招いてしまったことについての学校側の見解、4段目に騒動を受けての今後の対応、5段目で改めて謝罪をする――。こうした「文章の流れ」が、全く一致しているのだ。
さらには、それぞれの段落で使われる語句などの文章表現も酷似している。例えば、3段目にある学校側の見解の部分について、2つの文書を比較すると下記のようになる。
<博多高校>
本校では、これまでも『道徳教育を推進し、暴力は』絶対にあってはならないものであることを教育してまいりました。また、SNSの利用につきましても、その危険性を指導してまいりました。
<浦和学院高校>
本校では、これまで『国際教養とライフスキル教育を推進し、様々な機会を通じてあらゆる差別が』絶対にあってはならないものであることを教育して参りました。また、SNSの利用につきましても、その危険性を『教えるとともに誹謗中傷や無断掲載等は決して行ってはならないことを』指導して参りました。
上に引用した文章で表現が異なっているのは、二重カギカッコでくくった部分だけ(「参る」の漢字表現の違いは除く)。このように、両校の具体的な教育方針に言及した箇所や固有名詞を除けば、両校の謝罪文はほぼ同じ内容となっているのだ。
「コピペと言われても文句言えない」
実際、騒動の概要などを説明する冒頭の2段落を除いた後半部分(博多高校=325字、浦和学院=352字)で比較すると、両校の表現が完全に一致したのは「199字」に及んだ。つまり、文章の半分以上が全く同じなのだ。
そのほか、ほとんど一般には見ることのない「至りませず」という言葉が、どちらの文書にも共通して登場する点を疑問視する向きもある。
実際、1億本を超える記事情報をまとめている新聞記事データベース「日経テレコン」で、2000年以降の記事を「至りませず」というワードで検索すると、ヒットしたのはわずか1件。しかもこの1件は、浦和学院の謝罪文を引用したスポーツ報知の15年12月1日付け記事だった。
こうした類似点に気付いたネットユーザーからは、博多高校が謝罪文を「剽窃」したのではないかと疑う声が相次いでいる。実際、ツイッターやネット掲示板には、
「コピペと言われても文句言えない」
「句読点の打ち方がほぼ同じで寒気がした」
「同じような事件の謝罪文なら同じになるのはわかる。でも全然違う事件じゃん」
といった書き込みが数多く出ている。
また、同校の謝罪文をめぐっては、生徒による暴行事件に関する内容にも関わらず、「SNSの危険性」について言及していたことに違和感を示す声も出ていた。そのため、今回「剽窃疑惑」が明らかになったことで、
「何でSNSなんて出てきたんだと思ってたけど、コピペなら納得だな」
「だからSNSがどうこうって訳の分からん文言が入ってたのか」
などと揶揄する声も目立っていた。
一方で、今回の両校の文書の一致について、「謝罪文のテンプレートがあるんだろ」「さすがにこれは仕方ないだろ ビジネス文書なんて使い回し」と理解を示すような声も複数出ていた。
博多高校「剽窃したという事実はございません」
こうした「剽窃疑惑」について、博多高校はJ-CASTニュースの17年10月4日の取材に対し、ファクスで次のように回答した。
「ご指摘を頂き、私共といたしましても大変驚いております。お詫び文の作成につきましては、誠意をもってお詫びさせていただきたいという気持ちで作成いたしました。他校様の文書を剽窃したという事実はございません」