総選挙もにらみ 「生臭い」金融政策論議が続く

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   日銀がどの方向に向かうのか、世の中の関心は高い。国債を買いあさるのはそろそろ限界、米連邦準備理事会(FRB)が2017年10月から資産圧縮に向かうと決め、欧州中央銀行(ECB)も近く、試算買い入れ量を減らすことを決めるとみられる中、日銀だけは9月21日、金融政策決定会合で、現行の「長短金利付き量的・質的金融緩和」の継続を決めた。米欧をにらんで前例のない緩和政策からの「出口」を考え始める時期だとの声も強まってきているが、日銀の方向性が変わる気配はない。

   先の決定会合は、異次元緩和に反対票を投じてきた佐藤健裕、木内登英の2氏から審議委員が交代して初めてのもの。全員が第2次安倍晋三政権以降の任命となり、3年ぶりに全員一致になるとの見方が多かった。ところが、新任の片岡剛士委員が「現在の金融緩和効果は不十分」として反対票を投じ、一部に「片岡の乱」との声も出たほどで、政策委員会の「積極緩和色」が強まった印象を与えたのだ。

  • 米欧とは異なり、緩和の方向性の日銀
    米欧とは異なり、緩和の方向性の日銀
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一段の財政拡大にかじを

   民間エコノミスト出身の片岡氏の1票は、「初参加の会合だから、ひとまず賛成票を投じるのではないか」(金融筋)との見方が多かっただけに、「リフレ派としての強硬姿勢を誇示した」(同)形。これにより、緩和を強化する方向の議論が勢いを増すとの見方も出ている。

   日銀は1年前、長期金利を0%程度に誘導する新たな金融政策を導入し、この間、その水準への誘導に概ね成功してきたが、物価の押し上げ効果はなかなか見えず、2%目標を19年度に先送りしたばかり。1年前まで「年間80兆円ペース」で国債を市場から買い取ってお金を流す量的緩和を実施していたが、金利を中心にした政策の転換した結果、足元の国債買い入れペースは60兆円程度まで減少。それでも、「現行ペースで買い続けられるのはあと1年くらい」(エコノミスト)とされる。長期金利低下の効果についても本来は企業への貸し出しや住宅ローンの増加を促すはずだが、「もはやマイナス水準のため効果はほとんどない」(エコノミスト)のが実態だ。

   国債の大量買い入れは、財政ファイナンス、つまり、政府の赤字垂れ流しの尻拭いとの批判が付きまとう。特に安倍政権が教育無償化など一段の財政拡大にかじを切ろうとしていることが、金融緩和を強める圧力として働く。「希望の党」など野党が消費税率の引き上げ凍結や、自民党以上に増税分を教育費などに回すなどの政策を打ち出す見通しで、「選挙結果にかかわらず、日銀頼みの財政政策を続けざるをえないだろう」(全国紙経済部デスク)との見方が一般的だ。

   思い起こせば2013年1月、政府と日銀は政策協定(アコード)を結んでいて、日銀は2%の物価目標の達成に、政府は財政健全化に、一体で取り組む考えを明記している。4年半が過ぎ、2%目標の実現はなお遠く、政府の基礎的財政収支の20年度黒字化目標も先送りを安倍首相が明言している。

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