英ランカシャー州在住の50歳の男性が1年以上続く咳と痰に悩まされ、病院を受診し検査したところ肺に黒い影が確認された――。
医師らは肺がんと判断。内視鏡で患部を確認したところ、そこにあったのは巨大な腫瘍ではなく、小さな玩具のカラーコーンだった。
まるでジョークのような話だが、2017年9月21日に英国医師会誌で発表されたれっきとした症例報告だ。
出てきたのは玩具のカラーコーン
9月27日付の英タブロイド紙「Daily Mail」によると、玩具のカラーコーンを肺に「収納」していたのはポール・バクスターさんだ。
バクスターさんはここ1年、黄色く化膿した痰が治まらない状態で、地元の病院を受診したところ、30年以上タバコを吸ってきた喫煙者であることから、進行した肺がんではないかと告げられた。
CTスキャンを行ったところ、やはり左肺に大きな黒い影が映り、医師はかなり大きな腫瘍があると判断。大きな病院で詳しく検査を受けるよう進められた。
そこでバクスターさんはランカシャー州にある総合病院ロイヤル・プレストン病院を受診。CTスキャンの画像を見せられた同院のモハメド・ムンナヴァール医師は、気管支鏡で詳しく患部を観察しようと考えた。
しかし、映像を見ていたムンナヴァール医師は腫瘍があると思われる部位に腫瘍ではなく、奇妙なオレンジ色の物体があることに気がついた。「Daily Mail」の取材に対し、「これまで行ってきた気管支鏡検査で初めて見た物体だった」とその衝撃を語っている。
その正体は「Playmobil(プレイモービル)」というブロックを組み立てる玩具シリーズに含まれる、工事現場などに置かれるカラーコーンの形をしたパーツだったのだ。
その後胸部を切開して鉗子でカラーコーンは取りだされたが、バクスターさんの息子は、
「部分麻酔で手術を受けていた父の肺からカラーコーンが出てくると全員が大笑いしました」
と答えている。カラーコーンの除去後、バクスターさんの体調は改善し咳も止まったという。肺がんではなかったことは幸いだが大きな謎が残った。一体どうやっておもちゃのカラーコーンが肺に入ったのかだ。
子どもの頃誤嚥した可能性が
バクスターさんによると、7歳の誕生日にプレイモービルの工事現場セットをプレゼントされた記憶があり、そのときのコーンの可能性がある。サイズ的には鼻で吸いこめるようなものではなく、医師らは誤嚥で気道を流れていき肺に留まったと推測している。
報告執筆に関わったニコラス・デニー医師は、幼児が玩具などを誤飲してしまうことはよくあるとしつつ、「3歳くらいの子どもに多く、通常は呼吸に障害が起きるため気づきやすい」と指摘。
「恐らくバクスターさんが飲みこんでしまったのは比較的成長した時だったので症状が表れにくく、カラーコーン自体も長い時間をかけて何らかの有機物で被膜されていったのでしょう。それが肺を圧迫していたのです」
食道を通って胃に入ったのであればやがて排泄されたかもしれないが、偶然にも肺へと達したため、40年以上もそのまま残り続けたようだ。
ちなみに英国医師会誌によると、40年も経過して肺や気管支から異物が発見されたという症例報告は初めてだという。