民進・共産・自由・社民の4野党共闘を促してきた「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)が、民進党の事実上の合流先である「希望の党」との共闘を否定した。
民進党の「希望」への合流について、市民連合は「構築してきた市民と立憲野党の協力の枠組みが大きく損なわれてしまった」と無念さをにじませており、共産党も「希望」への対抗候補を立てる方針だ。「反安倍」で野党が結集できる可能性が低くなった今、いわゆる「リベラル派」は衆院選にどう臨むのか。
合流決定2日前に4野党と「基本的な合意」
市民連合は2017年9月29日、「民進党の事実上の解党と希望の党への『合流』方針についての見解」と題する声明を発表した。
市民連合は「9月26日に選挙協力の必要性と7項目の基本政策を内容とする要望書を4野党の幹事長・書記局長に提出し、基本的な合意を得ました」という。しかし、「民進党の前原誠司代表がその直後、希望の党の小池百合子代表と協議し、民進党所属の議員や党員、サポーター、さらに民進党に期待してきた市民に説明なく、希望の党への合流を主導してしまいました」としている。市民連合からすれば、はしごを外された形だ。前原・小池両氏は26日夜に連携について会談し、民進党は28日の両院議員総会で「希望」への事実上の合流の方針を承認している。
そのため市民連合の声明では「この民進党の決定によって、これまで構築してきた市民と立憲野党の協力の枠組みが大きく損なわれてしまったことは否めません」と無念さをにじませている。
衆院選に向けては、「安保法制を肯定する希望の党と市民連合が共闘することはありえません」と「希望」との協力を否定。「民進党から希望の党への合流については、今後まだまだ紆余曲折が予想されます」という見込みのもと、「地域レベルで立憲野党や立候補予定者と市民の協力体制が生きているところで市民結集により選挙を戦うなど、さまざまな可能性が残っています」と選挙戦に向けた体制を模索する考えだ。
市民連合は15年9月の安保関連法案成立を機に、同年12月に結成。16年7月の参院選では、1人選挙区全32区での野党統一候補の擁立を後押しした。17年10月の衆院選でも野党共闘を後押しする方針を表明している。
小池氏、リベラル派は「排除されないということはなく、排除する」
だが、野党第一党である民進党が衆院で事実上解党し、「改革保守」を掲げる「希望」が登場したことで、「リベラル派」の選挙戦には暗雲が立ち込めている。
「希望」代表の小池百合子氏は29日の都庁での会見で、民進党のリベラル派について「排除されないということはなく、排除する。というか、絞らせていただく。安全保障、憲法観といった根幹の部分で一致していることが、政党構成員として必要最低限のこと」と表明。公認申請があっても「選別」される可能性が高い。
市民連合の主要メンバーの1人、山口二郎・法政大学法学部教授は30日、ツイッターに
「情報が錯綜する中、判断のタイムリミットが迫る。小池流排除の論理が本物なら、リベラル派の加入戦術はあり得ない。当たり前」
と投稿。「立憲主義の旗をもう一度立て直すという展開になれば、当然市民連合もそれを支援することになると思う」と結集を模索している。
福島瑞穂氏「リベラル勢力よ、結集しよう」
4野党の1つ、共産党の小池晃・書記局長は29日、社民党の又市征治幹事長と会談したとして、同じくツイッターで
「総選挙で、10県20選挙区で候補者を一本化して闘うことで合意しました。これは第1次分で、さらに広げたいと思います。野党と市民の共闘の旗を、簡単に下ろすわけにはいきません!」
と共闘体制の進展を報告した。なお、志位和夫委員委員長は民進党の「希望」合流を「重大な背信行為」だと強く非難しており、「希望」公認候補に対して対抗馬を立てる方針だ。
社民党の福島瑞穂・参院議員も30日、「大政翼賛会はごめんだ。リベラル勢力よ、結集しよう。市民の力で、未来を、民主主義を、希望をつくろう!」と呼びかけた。
民進党を離党し、「希望」に加わった長島昭久氏は30日、総選挙での野党共闘の仕方について、ツイッターでアンケートを呼びかけた。選択肢は(1)小異を捨て、共産党以外の野党を一つに束ねて臨む(2)共産党も含めすべての選挙区で一騎打ちに持ち込む(3)共産党との共闘派、希望中心の保守系に分かれて臨む――の3つ。同日18時の時点で3757票が投じられており、最も多いのは理念で分ける(3)の58%だった。全野党がまとまる(2)は30%で、(1)は12%となっている。