衆院選に向けて民進党が「希望の党」に事実上合流することが決まり、100億円あるとも言われる民進党の資金がどう使われるかも焦点になりそうだ。
結党したばかりの「希望」は、民進党の潤沢な政党交付金も狙っているとの見方が根強い。だが、「希望」の若狭勝氏は2017年9月30日のテレビ番組で、「もらうとか、そういうことは絶対にない」と断言した。
「希望の党」公認議員に民進党は資金援助できるのか
2017年9月28日に行われた民進党の両院議員総会で承認された文言には、
「民進党は今回の総選挙に候補者を擁立せず、『希望の党』を全力で応援する」
の1文がある。この「全力で応援」の中に、資金面の応援が含まれるかが焦点だ。これまでは、民進党から立候補する候補は党から「公認料」といった名目で資金提供を受けてきたが、今回の衆院選では民進党は立候補予定者全員の公認を取り消し、離党させて希望する人は「希望」に公認申請をして出馬することになった。そのため、民進党からの「公認料」という形での資金援助はできない。ただ、民進党に交付された政党交付金を「希望」の公認候補の援助に回すとなれば、政党交付金の原資が税金だということもあり、その是非をめぐって議論が起きそうだ。
若狭氏は30日、読売テレビ「ウェークアップ!ぷらす」に生出演。キャスターの辛坊治郎氏が、こういった疑問点を指摘すると、若狭氏は
「これはまったく100%否定しておきますが、民進党が持っている政党交付金を希望の党が譲り受けるとか、もらうとか、そういうことは絶対にない」
と返答した。背景として「希望の党は、政治資金とか『政治とカネ』の問題を極めてシビアにとらえる。それは私の(東京地検)特捜部の検事としての考え方が根っこにあるからだ。お金欲しさという思いはまったくない」と強調した。
100人擁立すれば小選挙区だけで3億円
しかし、衆院選立候補にあたっては、小選挙区だけで1人あたり300万円の供託金が必要。比例代表名簿に名前を載せて重複立候補すれば、さらに300万円が必要になる。「希望」は100人以上の候補者を擁立する方針で、資金のやり繰りには不安が残る。一方で野党第一党の民進党は潤沢な政党交付金を受けている。
辛坊氏は「民進党のお金で(希望の党から)立候補するのは違法ではないとされている」とした上で「(希望の党は)何億円というお金をどう用意するのか」と問いかけた。これに若狭氏は
「はい。その辺はきちんと各候補者にお願い申し上げているところ。民進党のお金を少し援助してもらって選挙戦を戦うとなると、希望の党が軸足をもってやってきていることが非常に損なわれる。そういうことはまったくないと断言する」
と、民進党からの資金援助を重ねて否定した。
番組で辛坊氏はさらに「民進党から来た方々の供託金等が、民進党の政党助成金から払われる可能性はないのか」と質問。若狭氏は
「民進党がどうするかをまだ詰めていないが、あくまで個人負担というような建て付けで私どもは考えている」
と回答した。
小池百合子氏「自前の努力で出馬し、選挙戦を戦っていただく」
選挙資金については、「希望」代表の小池百合子・東京都知事も29日、都庁での会見で言及している。「民進党にお金や組織の面で頼ったのではないか」との報道陣の質問に、
「お金欲しさに云々と批判される方、それはまったくの間違い。しがらみのない政治のためには、お金のしがらみからつくってはいけない」
と、組織間で資金を融通して「しがらみ」を作り出すことはないと主張し、
「今回、希望の党公認候補として戦う方々には、それぞれ自前の努力で出馬し、選挙戦を戦っていただく。これを条件としている」
と、若狭氏の言う「個人負担」と同様の発言をした。ただ、民進党の政党交付金については直接触れなかった。
一方で民進党は、手元の政党交付金を「希望」に提供するかどうかを現時点では明らかにしていない。28日午後の両院議員総会後の党側の説明では、民進党を離党して「希望」に公認を受けた候補者の選挙活動にかかる資金について、幹事長が交付方法を工夫するとだけ示した。
舛添氏「厳しく監視していこうではないか」
その直後に会見した前原誠司代表も、報道陣に「民進党にある98億円とも言われる資金は今後どうするか。たとえば希望の党に提供されるか」と問われ、「もうちょっとあるが」とした上で、「その使い道についてはまったく決めていない」とするにとどめていた。
こうした中での上記の若狭氏の発言。ここ最近、「希望」や小池氏に対する批判を展開している舛添要一・前都知事は30日、ツイッターに「今、『ウェークアップ!ぷらす』というテレビ番組で、若狭議員は、『希望の党は民進党の政党交付金はもらわない』という趣旨の発言。希望の党は民進党からの寄附をあてにしているのではないのか」と投稿。その上で
「法律上、政党間の寄附は無制限にできる。厳しく監視していこうではないか」
と述べていた。