自閉症の子どもは「音楽に早熟」 京大が研究で発見、不協和音に敏感

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   自閉症の人は、よく音楽などの芸術に才能を発揮することが知られている。京都大学の研究チームは、自閉症の子どもが健常児と比べ、楽曲の不協和音に敏感に反応することを発見した。

   これは、「音楽に早熟」であることを示しているという。研究成果は国際心理学誌「Frontiers in Psychology」(電子版)の2017年9月22日号に発表された。

  • 自閉症の子の音感は「早熟」
    自閉症の子の音感は「早熟」
  • 自閉症の子の音感は「早熟」

「絶対音感」と「暗譜能力」以外の音楽センスは?

   京都大学の発表資料によると、自閉症の人はしばしば学問や芸術に才能を発揮し、自閉症に関する研究でも音楽の事例が多く報告されている。他の音との比較なしに音を聞いただけで音名(ド・レ・ミ...)が分かる「絶対音感能力」や、曲を聞いて即座に再現する「暗譜能力」などの調査が行われてきた。しかし、演奏に関する能力が中心で、音楽をどう理解し聞いているかに関する研究はあまり行われてこなかった。

   そこで研究チームは、自閉症と診断された4~9歳の子ども19人と、同じ年齢層の健常児28人に、様々な楽曲を聞かせ、聞いている時間を比較することで、自閉症児がどのように音楽を聞いているのか調査を行なった。

   1つ目の実験では、ほぼ全編が協和音で作曲されている楽曲と、それに若干編曲を加え不協和音を増やした楽曲を用意し、子どもたちがキーボードを押し続けた時間だけ音楽が流れるようにした。自分で聞き続けるか、やめるか選べるわけだ。協和音とは、ざっくりいうと、美しく心地よい和音、不協和音とは美しくない濁った和音をさす。どちらのグループも元の協和音の楽曲の方を長く聞き続ける結果が出た。さらに自閉症児の方が不協和音を多く含む曲を聞く時間が短かった。自閉症児は不協和音を好まない傾向がみられたわけだ。

アルビノーニの「アダージョ」に聞き惚れる?

   2つ目の実験では、不協和音をあまり含まない2曲と、作曲者があえて音楽効果を狙って不協和音を多く入れた2曲の計4曲で、最初の実験と同じように聞いている時間を比較した。ちなみに、作曲家があえて不協和音を多くした曲とは、シェーンベルグの「作品33」とアルビノーニの「アダージョ」だ。特に「アダージョ」は、雄渾多感で陰翳に富んだ旋律から、欧米では葬儀の時に最も多く使われる曲といわれる。オーソンウェルズ監督の映画「審判」(1962年)に使われ、日本の観客にも鮮烈な印象を与えた。

   その結果、1つ目の実験では不協和音を嫌う傾向があったのに、2つ目の実験では、自閉症児のグループは「アダージョ」など不協和音が多い楽曲を健常児のほぼ2倍も長く聞き続けることがわかった。

   この結果について、研究チームの正高信男教授は発表資料の中でこう語っている。

「自閉症は全人口の1~2%が該当すると考えられています。また、近年では脳の多様性の1つとして捉える考え方も出ています。今回、自閉症の子どもは、不協和音やその楽曲中での使われ方に関して健常児とは異なる反応を示しています。これは、ある種『早熟した』音楽の好みを持つことを示す結果です。今後も様々な自閉症の人の研究を重ねれば、自閉症と音楽的能力との関係をより深く理解できるようになると考えています」
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