衆院が解散された2017年9月28日、民進党も大きな転機を迎えることになった。前原誠司代表が同日午後開かれた両院議員総会で、次期衆院選(10月10日公示、22日投開票)では民進党の公認候補を立てず、希望者は東京都の小池百合子都知事が率いる「希望の党」の候補として立候補させる方針を提案し、了承された。
出席した議員からは「解党的な合流」だとの声も出たというが、前原氏は解党や合流ではなく「アウフヘーベン(止揚)」だと主張した。ただ、次期衆院選の候補者が(1)全員「希望」の公認を希望するか、(2)仮に希望したとしても公認されるか、は不透明。「解党」や「分裂」のリスクは消えないままだ。
議論はメディア非公開だったが「提案は満場一致で拍手で承認」
両院議員総会では、常任幹事会名の「総選挙の対応について」と題した文書が配布され、文書では
「今回の総選挙における公認内定は取り消す」
「民進党の立候補予定者は『希望の党』に公認を申請することとし、『希望の党』との交渉及び当分の間の党務については代表に一任する」
「民進党は今回の総選挙に候補者を擁立せず、『希望の党』を全力で応援する」
の3点を掲げた。前原氏は提案理由を
「民進党の今の現状を考えたときに、どうすればもう一度政権交代を果たせるか。これを考えに考えたあげくに、末に、皆さんに提案をさせていただいている。これは、他党に合流すると言うことではない」
として、
「政権交代のための大きなプラットフォームを我々がもう一度つくるということ」
などとして理解を求めた。前原氏のあいさつ以降は「議員懇談会」に切り替えられ、メディアには非公開にされたが、民進党の説明によると、出席者からは野党連携のあり方などについて質問が出たが、提案は最終的に満場一致で拍手で承認されたという。
前原氏以外の前衆院議員は全員離党、参院・地方議員は民進党のまま
前原氏の提案では、前原氏以外の民進党所属の前衆院議員は全員離党させ、希望者は「希望」に公認申請する。参院議員や地方議員はそのまま民進党に所属する。前原氏は民進党代表を続投する考え。前原氏の出馬が無所属か「希望」公認かは未定で、
「これはきわめてテクニカルな話で、法律上は民進党籍を残したまま、例えば希望の党の公認候補になることは問題ないが、これについてどう考えるか、少し整理しながら10月10日までに結論を出したい」
と話した。
出席した議員からは、今回の提案は「解党的な合流」だとの指摘が出たといい、この点を記者から質問された前原氏は
「色々な方々がいるが、私は小池さんのおっしゃっているアウフヘーベン、止揚だと思っている」
と反論した。「アウフヘーベン」は、築地市場の移転問題や新党結成について小池氏が口にする言葉でもある。
「希望」公認希望しない人の対応は「これから」
それでも「解党」「合流」のリスクはくすぶっている。ひとつが衆院選の問題。小池氏は27日夜に出演したBSフジの番組で、「希望」への参加を受け入れる条件として憲法改正や安全保障に対する考え方を重視することを明らかにしている。民進党の中には、この2つの分野で「希望」とは違う考え方を持つ議員もいる。
前原氏はこういった議員が「希望」の公認を得られるかどうかについて
「一緒にやってきた仲間なので、この仲間の公認を目指すということで、これから交渉していくことになる」
と述べるにとどめ、「希望」公認を受けられるか以前に、公認を希望しない人が出た場合の対応についても
「これから皆さん方のご意向をうかがうことになる」
とした。このままでは、いわゆる「リベラル派」の前衆院議員が無所属での出馬を余儀なくされる可能性がある。
もうひとつが、今回の衆院選には直接関係ない参院議員らの問題だ。次回の参院選は19年夏に行われる見通しだが、前原氏は
「それまで民進党ということで参院議員を活動させるということは、現時点は民進党代表としては考えていない」
と明言。その上で
「したがって、衆院選が終われば、どういう組織にしていくかについては、内部で相談しながら決めていきたい」
と述べ、民進党全体が「希望」に合流する可能性に含みを持たせた。