「無理やり給食を食べさせたわけではないし嘔吐はしていない」。報道に対し岐阜市の教育委員会は頭を抱えている。
これは岐阜市の小学校で給食を残さずに食べ切るよう指導した教師がいることがわかり、2016年9月26日に教委と校長が謝罪会見を開いた、というものだが、この会見自体も報道のニュアンスを正す目的だったそうだが、そうはならなかった。
「児童5人嘔吐」と報じられたが...
今回の「事件」に関しては、地元新聞が26日、このような報道をしたことから始まった。「児童5人嘔吐」という見出しになっていて、
「1年間で4人が給食後などに吐き戻し、うち2人は三度にわたって嘔吐した。教諭が食器を持ち、児童の口に食事を運ぶこともあったという」
と書いている。さらに、17年7月に嘔吐した児童は「体調が悪い」と保護者が学校に連絡していたにも拘わらず、教諭にそれが伝わっていなかった、と書いている。
これに関してネット上では「人権問題だ!」などと言った批判が出て、
「こういう目にあった子が過食症、拒食症になるんだろうよ」
「こんな教諭や無意味に暴力振るう教諭は昭和でも警察に突き出されてた」
「無理やり食わせたら強要罪、それで嘔吐したら傷害罪かな?」
などといったことが書き込まれた。これは本当なのだろうか。J-CASTニュースが17年9月27日に岐阜市の教育委員会に取材したところ、担当者は、
「無理やり給食を食べさせたわけではないし嘔吐はしていない」
と頭を抱えていた。
「少し食べようか」「一口食べて見ようか」「あーん」
どういうことがあったのか。教委の担当者によれば、小学校に50代の女性教諭がいて、16年度までは1年生の担任だった。この教諭は給食に関し、子供に給食を完食させることによってできることを増やし自信を付けさせたい、という理念があった。ただし、食べることを強要はしておらず、残している児童に対しては「少し食べようか」「一口食べて見ようか」と接してきた。「あーん」と言いながらスプーンで口に運ぶこともあったが、結果的に、16年度は飲み込まなかった児童が3人いて、1人は飲み込んだが暫くしてもどした。17年7月は担任ではなかった学級で、体調の悪いことを知らずに食べさせてしまったためもどした。この計5人のことが記事になったのだという。
地元紙の記事は独自取材のもので、記事内容が衝撃的だったため新聞、テレビなどの取材が殺到し、26日にマスコミ向けの説明会を開くことになった。記事にあるような食べることを強要したり、嘔吐したりという事実は無いと説明したのだが、地元紙と似たような内容で報じられてしまったという。体調が悪いのに食べさせてしまった事については校長が説明会の場で謝罪した。
教委は記事が出る前に、小学校の給食の食べさせ方について匿名で苦情が寄せられていたため、調査をしていたという。そのため、50代の女性教諭には厳重注意処分を25日に言い渡した。教委は今後このような問題が起こらないように、文部科学省の「食に関する指導の手引」にのっとって、食べきらせることではなく、楽しく感謝の心を持って給食を児童に食べさせるように指導するとしている。