李容浩(リ・ヨンホ)外相が米国の戦略爆撃機を「撃墜する権利がある」とまで威嚇したのは全く逆に、実際には北朝鮮が爆撃機の飛来に全く気付かずに「大慌てしていた」との見方が出てきた。
韓国メディアは、爆撃機の飛来直後に北朝鮮側の戦闘機がスクランブル発進したり、防空網が稼働したりする様子が見られなかったとする情報機関の話を相次いで報じており、日本側の報道には「深刻な電力難」が原因だとの見方すら出ている。
「宣戦布告」発言まで飛び出したものの
米国防総省は2017年9月23日(米東部時間)、戦略爆撃機B1BとF15戦闘機を北朝鮮東方の国際空域で飛行させたと発表した。「米国の戦闘機や爆撃機が21世紀に入ってから北朝鮮沖の非武装地帯(DMZ)の最も北側」を飛行させ、「北朝鮮の無謀な行動の重大さを強調」したと説明している。これを受けて、国連総会のためにニューヨークに滞在していた北朝鮮の李外相は、米国が「宣戦布告」した以上、爆撃機が「北朝鮮領空に入らなくても任意の時点で撃墜」する権利があると主張した(米国側は宣戦布告を否定し、発言を「ばかげている」と非難)。
「真夜中頃に(B1Bが)来たので...」
ところが、この外相発言は実態とかけ離れている可能性もありそうだ。KBSテレビやSBSテレビが国会議員の話として伝えたところによると、国家情報院(国情院)が9月26日に国会の情報委員会の懇談会で、北朝鮮が
「レーダーでB1Bの出撃を捕捉したかは不明」
としながら、
「総合すると、真夜中頃に(B1Bが)来たので、全く予想もできておらず措置を取れなかったようだ」
などと説明。米軍がB1Bの出撃を発表してから北朝鮮は戦闘機を日本海側に移動させ、東海岸の守りを固める動きが観測されたという。総じて、米韓の情報当局は
「予期せぬB1Bの出撃に北朝鮮が大きく慌てた」
と分析しているというのだ。
朝日は「電力難でレーダー稼働せず」説
朝日新聞は9月27日朝刊で、さらに踏み込んで「北朝鮮軍の早期警戒レーダーが稼働していなかった」と軍事関係筋の話として伝えており、その背景として「深刻な電力難」を挙げている。
朝鮮中央通信は5月28日、金正恩・朝鮮労働党委員長の立ち合いのもとで新型の地対空ミサイルの迎撃システムの発射試験が成功したと報じ、その中で、試験は
「任意の方向から飛んでくる様々な空中目標物を探知し、迎撃する方法で行われた」
と主張していた。一度は誇示したはずの「空中目標物を探知」する仕組みが機能していない可能性もある。